悠言録

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[2006年10月30日]

 作家、水上勉さんのエッセイに「達磨の縄跳び」がある▼達磨、髪むじゃらに丸い目のダルマさん。実在の人物で、インドから中国に禅を伝えたボーディダルマ(菩提達磨)。壁に向かって座ってのきびしい修行は「面壁九年の人」としても知られる▼水上さんが寺で修行していた小僧時代、夜中に夢をみた。掛軸の達磨が縄跳びをしている。空に月が出ていて、野原にはチューリップがいっぱい。変なけしきだ、と水上さんは書いている▼歳月は過ぎて水上さんが67歳の時。書くのに疲れた夜にふらり、仕事場に近い出町(京都市)の鴨川河原を歩いていると、先に来たヤツがいて、雲間からもれてくる空明かりの下で縄跳びをしている▼水上さんは続ける。よく見ると、破れ衣をまとった男で、67〜68か。髪むじゃらだ。きっと達磨にちがいない。そばへは寄らずにしばらく眺めていてから帰ってきた、と▼さらに部屋に入った水上さん「河原の達磨」を描く。衣の裾を割って足を2本、縄を持った両腕には灸のあとを、ふたつみっつつけると生き生きした縄跳び姿の達磨になった。この絵にそえた歌が「世の中をありのままに生きるなら無理して座ることもない」▼当欄も新たなスタートを切った。無理をせず、自然体で世の中をありのままに書き、伝え、考えることができたら、と思う。むろん、2本の足も動かして。(龍)

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