悠言録

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[2006年11月03日]

 いじめによる問題が相次いでいる。生徒や教師、さらには校長までもが自殺に追いやられる現状。とくに中学生のいじめが原因とみられる自殺問題は深刻だ▼中学生の自殺者やいじめに関与する学年のほとんどが1年生か2年生。これを「中1ギャップ」というそうだ。小学生から中学1年生になったとたん、学習や生活の変化になじめずに不登校となったり、いじめが急増するという現象。新潟県教委が名づけた▼ギャップの典型例は、コミュニケーションが苦手な生徒が小学校時の友人や教師の支えを失う「喪失不安増大型」と、小学校でリーダーとして活躍していた生徒が中学校で居場所を失ってしまう「自己発揮機会喪失ストレス蓄積型」であることがわかったという▼相次ぐいじめ自殺に、宮沢賢治の童話「猫の事務所」をふと思う。仕事は優秀だが、かまどで眠る癖があるので体が薄汚い「かま猫」が、先輩や仲間たちの猫に嫌われる。最初はかばっていた上司も最後にはいじめの仲間に。そしてかま猫はついに泣きだしてしまう、というもの。賢治童話は、好悪がいじめに転化していく過程や力学を示唆し、まるで今を語っているかのようだ▼日本には「自殺は弱い人がするもの」という社会的偏見がある。「なぜ弱い立場に立たされたのか」「なぜ社会は救うことができなかったのか」という視点がもっと必要ではないか。(克)

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