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市民が納得できる結果を − 問題究明の徹底を

2006年11月04日

論説委員 田村 耕一

 全国から注目される事態となった奈良市病休職員問題は、ほかにも同様の職員がいることや、建設工事の談合疑惑など新たな問題が起こっている。この元職員に対し、市は懲戒免職、部落解放同盟奈良県連は除名という最も厳しい処分を行なった。この処分が迅速に行なわれたことは評価できよう。しかし、これで全てが解決した訳ではない。我々は問題解決のため、根本的な原因を探らなければならない。<br>   今回の事態を惹起した原因は、まず市の人事制度にある。地方公務員は法により身分保障を与えられている。これは、政治的行為、争議行為のほか、営利企業等への従事などについて、制約が課せられている反対給付と受け止められる。元職員は、手厚い人事制度を悪用した典型と言える。<br>   多くの市職員は、悪用すればこのような勤務形態を採れることを知っているが、良識により誰もしなかっただけだ。人事当局は、制度の虚をつかれたと言いたいところだろうがそうではあるまい。<br>   市環境清美部の職員の勤務状況については、平成9年の市議会をはじめ、市の監査でも問題を指摘されていた。市はこのことを承知しながら放置してきた。その結果が今回の事態となったのである。<br>   一方で、この元職員による談合疑惑がある。市は公正取引委員会に調査依頼することを決定しており、いずれその結果が公表されるだろう。<br>   これとは別に、入札制度改革に元職員が圧力をかけ、それを実行させなかったという問題がある。市が郵便入札制度を採用しようとした時、元職員は、「部落解放同盟によるセクション別交渉の議題にする」と迫っている。その結果、市当局は郵便入札制度を見送ったのである。<br>   いずれも共通しているのは役所の事なかれと同和問題に対する腰の引けた姿勢である。このような役所の姿勢が原因となり、事件に発展したケースは大阪の旧芦原病院や財団法人飛鳥会のほか、京都市の職員問題など数が多い。今回の奈良市の問題は、他の市町村にも類似のケースがあるはずだ。<br>   長らく同和問題に取り組まれた野中広務元官房長官は最近の週刊誌で、「これは地方公共団体のトップが腹をくくって決断するしかない」と断言し、「特別扱いを今こそなくさなければならない」と語っている。<br>   我々は同和問題、談合問題を行政が解決することと片付けてはいけない。今回のように大きな問題となる事態を見て見ぬふりをし、容認してきた社会のあり方を問わなければならない。<br>   我々は、とかく物事を大きくさせまいとして互いに了解し合う風潮がある。このような日本人の特質を土居健郎氏は『「甘え」の構造』で見事に切り込んでいる。ここで、「日本人は事実を的確に指摘して摩擦を生むよりも大人しく波風を立てない生き方を世間が支持してくれるという甘えの構造がある」と指摘した。今回の問題もこの延長線上にある。<br>   事実を事実として正視し、公平で毅然とした役所のシステムづくりが肝要なのである。加えて、一部の特権者を認めてはならない。奈良市は人事制度を悪用し、「うまみ」を得ている職員が他にいないか、徹底した調査が必要だ。また、談合をさせない入札制度を急ぎ確立しなければならない。<br>   元職員の家族名義の建設会社は、奈良市からこの5年間で177件2億5千万円も受注している。異常と言うしかない。この背景には有力市議の存在がうわさされている。この際、徹底した調査を行ない、市民が納得できる結果を出して欲しい。膿を出し切るとはこういうことにある。

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