悠言録

トップ悠言録一覧 > 悠言録

[2006年11月08日]

 医師が初診のとき、患者ごとに必ず作成するのがカルテ(診療記録)である。医師法で定められ、処置や投薬内容などをすべて書かなければならず、5年間の保存が義務付けられている▼判例では「カルテは医師が主体的に作った備忘録」とする解釈が定着しているが、カルテに書かれているのは患者のデータであるから、最近では、患者の権利として、医師や医療機関にカルテの情報開示を求めるケースが増えてきた▼その多くが、医師の治療や手術、看護士の対応などで職務上起こした過失により、患者が被害を受けた医療過誤の訴訟をめぐってである。つまり、原、被告双方の立証上、必要とされるのである▼「医は信頼の仁術である」といわれてきた。医学や薬学の進歩もあって、高齢社会はますます長寿化しているが、感染症や生活習慣病の広がり、終末期医療の選択など、医師と患者の関係には、患者の自己決定を重視するインフォームド・コンセント(説明と同意)が不可欠となっている▼そんな流れの中、病気の腎臓を移植した宇和島の病院外科医の行為は衝撃的だった。患者と同僚の目をごまかした医の忍術と算術ではないか。カルテにはなんと書いたのだろう▼患者はモルモットではない。医の倫理は生命倫理でもある。患者の命と人権が尊重されなければならない。カルテは、誇りと敬けんな気持ちで綴ってほしいのである。(木)

  • 凛と咲く〜輝く女性たち
  • バックナンバー購入のご案内
  • 会社情報
  • お問い合わせ

ホームニュース論点悠言録

バックナンバー購入会社情報お問い合わせ

当サイトに掲載の記事・写真・図版などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権並びに国際条約により保護されています。

Copyright Nara Nichinichi Newspaper