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混乱に批判相次ぐ − 山下真生駒市長 「白紙撤回」から一転

2006年11月18日

主筆 藤山 純一

 いま生駒市が揺れている。13年も前に、県と生駒市と、その事業主体である都市再生機構の三者が合意し、すでに着手していた同市高山町の関西学術研究都市・高山第2工区の開発事業で、今年1月、初当選した山下真市長が「市として協力姿勢を白紙撤回する」と表明したため大混乱を引き起こしている。市議会や市民などから山下市長の姿勢に批判が相次いでおり、今後の対応次第では更なる混乱を生じかねない事態だ。<br>   この開発事業は、国家プロジェクトである学研都市の「文化学術研究地区」のパイロットモデル都市。都市再生機構によると、周辺地域の資産・自然資源を活用しつつ、居住者、研究・従業者や訪れる人々が安心して豊かな生活を楽しめ、住むことと働くことの調和のある「多彩な都市機能」を備えた21世紀の街づくりを目指している。<br>   約288ヘ クタール人口約1万3000人を予定。国道163号線沿いで、近鉄けいはんな線学研北生駒駅からバスで5分の好立地。<br>   戸建て住宅、集合住宅、商業施設などの「都市的居住ゾーン」、研究開発型産業施設や教育研究機関などの「学研施設ゾーン」、大学や中高一貫学校や医療施設、健康・福祉施設、芸術村、バイオ系農作物実験工場などの「自然調和ゾーン」、県立の総合公園や自然保全緑地、茶せんなどの実験農場の「自然保全ゾーン」をそれぞれ整備する方針だ。<br>   特に、けいはんな丘陵や富雄川、くろんど池など豊かな自然と、伝統産業の茶せんや高山八幡宮、高山城址などの歴史・文化資産との調和を目指しているのも特色だ。<br>   平成6年2月には、県、生駒市、都市再生機構の三者がこの開発整備事業の円滑な推進を図るため、7条からなる「基本協定」を締結。同事業の実現に向け、費用負担や事務手続きなどについて積極的に協議し、三者で力を合わせて取り組むことを確認し合った。<br>   これに基づき都市再生機構では、用地買収などの事業を推進。同15年秋には同工区内で、「絶滅のおそれのある国内希少野生動物」に指定されている、タカ目タカ科のオオタカの営巣跡形を確認したことから、オオタカの生息環境の保全方策を検討するため、鳥類の専門家らでつくるオオタカ調査検討会を設置。1年9ヶ月間、計8回にわたり、現地調査などを重ね、昨年10月に提言をまとめた。<br>   これによると、事業予定地内の約20ヘクタールをオオタカの繁殖活動を保全するエリアに設定、できるだけ現状での保全に努めるほか、アカマツ林を主とした里山的植生を維持するための適切な管理作業と、栄巣地が移動する可能性も考えられるため継続してのモニタリングの必要性も強調。都市再生機構ではこの提言を尊重して開発を進める姿勢を示していた。<br>   こうした作業が着々と進む中、山下市長は、今年1月の市長選で掲げたマニフェストに同工区について「市の協力姿勢を白紙撤回し、開発を中止させるため事業主体と交渉する」と明記。3月定例市議会での所信表明演説でも「中止に向けて、事業主体である都市再生機構や県と交渉していく」表明し、市長就任直後、生駒市内から奈良市内に転居したことも合わせて、国家プロジェクトへの参画の約束を突然反故しようとする山下市長の姿勢に、市議会や市民などから反発の声が相次いでいる。<br>   今月14日に開かれた市議会北部地域開発特別委員会でも、同工区の開発の実現を懸念する市議から市長の姿勢を問う声が相次ぎ、席上、山下市長はこれまでの「白紙撤回」から一転、「条件次第では検討の余地もある」としたが、混乱を招いた市長の責任は避けられない。<br>

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