悠言録

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[2006年12月01日]

 西欧の「石の文化」に対する日本の「木の文化」。私たちの風土の中に、生命を愛おしむ心が脈々と受け継がれてきたことを改めて思う▼奈良大学が先日開いた「世界遺産学シンポジウム」に出かけた。金関恕・大阪府立弥生文化博物館館長の基調報告「木と文化〜人とモノの歴史」のあとパネルディスカッションが行われた▼1972年、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」がユネスコで採択されたが、特に1994年、世界遺産会議が召集した奈良会議の意義がどれほど大きかったか、館長は強調した▼それまで「西欧の人々は(別世界の)伝統に対してほとんど関心を払ってこなかった」。しかし、世界から奈良にやって来た専門家たちは、法隆寺などで木造建築の保存・修復などの実態に触れ、日本の工匠たちが如何に献身的、謙虚に「木」に向きあっているかを知った。「″文化の多様性″の認識が共有」される画期的な転換点になったという▼木造建築は火災でいつ消えてしまうか知れない。腐ったり、虫に喰われたりもする。消滅する生命、朽ちる生命、そのもろさ、はかなさ故に人々は一層切なく、愛おしむ心を注ぎ、知恵を集めて生命を守ってきた▼「木の文化」の中で暮らしている私たち。木(子供)に「もっと強くなれ」「勇気を持て」と言う前に、木の肌にそっと手を当ててほしいと思う。(水)

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