悠言録

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[2006年12月30日]

  「野育ちながら野卑に落ちず、技に媚びず、品格を失わないやきものは少ない。古唐津はそうしたやきものである」。正月飾りをあれこれ思いながら開いた雑誌にそう書いてあった▼数年前、奈良の骨董店で古唐津の茶碗を買った。最初、緑釉が美しい伊賀焼を手に取ったのだが、店主が「どうせなら、こちらの方を―」とすすめてくれた▼古唐津は、室町時代末期から江戸初期にいたる数十年間に焼かれた唐津焼で、「その圧倒的な数にも関わらず、短い期間に花開き、すぐに姿を消した」。佐賀県内の唐津市北波多村・松浦・伊万里・有田・武雄・長崎県の平戸などに存在した古窯の生産品という▼購入した古唐津の茶碗は、黒飴釉に白釉を流した素朴で平凡な品。高台の鉄分の多い土味、「雨漏り」の出た古色が″地方の生活感″を漂わせている▼奈良に、「奈良茶碗」と呼ばれる飯茶碗があったらしい。江戸時代中頃以降、奈良の庶民が使っていた、伊万里焼などの生活雑器。大ぶりの桶型の茶碗にふた付き、色絵もあるが、ほとんどは青の染付けで風景や草花などが描かれていた。図録で見ただけ、まだ実物に接したことはない▼この正月、床の間には、古唐津の黒茶碗と母の遺品の赤漆の嫁入り道具の五重箱を飾ろうと思う。九州で、5才の私を残して逝った母。このごろ、まぼろしのような面影がしきりに浮かんでは消える。(水)

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