悠言録

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[2007年01月23日]

 冬の海が冷え込めば冷え込むほど、魚の身が締まり美味しくなる。釣り便りを聞くたび心が躍ってしかたがない▼「海のない奈良」が私には唯一おもしろくない。テレビで海の風景が映ると、つい引き込まれてしまう。故郷の海と重なって、潮の香がよみがえる。寄せて返す白い波。子供の頃の思い出へとつながるのだ。もう、何年故郷に帰っていないだろうか▼午前2時前、奈良から車に同乗し出発。紀伊山地を抜けて三重の海岸へ。ときには、電車で大阪に出て友達の車で和歌山へ。港に着くと、海の匂いに酔いそう。海鳥が鳴く中、遊漁船で沖磯へ向かう▼波間にウキが揺れ、すぽっと沈む。「よっしゃ、きた」。カーボン竿が満月の如くしなり、糸がキュンキュン鳴る。リールを巻くと、鮮やかな青碧の魚体が海の渦から浮き上がる。冬磯の宝石・グレ。山陰ではクロ、関東ではメジナと呼ぶ▼釣り上げてしばらくは、碧メノウのように息を飲む美しさだが、やがて黒っぽく変色する。魚店にはめったに並ばない。身が痛みやすいうえ、黒い姿が購買意欲をそぐのだろう。釣ったその夜のうす造りの何と美味なことか。こりこり感とともに脂の旨みが広がる。焼き身はポン酢で、アラはうしお汁に。釣り人だけが知るグレの魅力▼荒れ磯の怖さにこりて、もう、何年出かけていないだろうか。奈良の向こうに広がる冬の海を遠く想う。(水)

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