悠言録

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[2007年02月19日]

 上野道善師が先日、東大寺の第219世別当に選出された。5月1日に就任し、任期は3年。華厳宗管長にもなる▼言わずもがな、上野師は「東大寺管長」ではない。別当とは住職で、つまりは東大寺の長だから管長で不都合はなさそうだが、正式名ではない。親しみと尊敬からくる錯覚で、管長とは宗派の総帥の呼称である。まさに釈迦に説法だが▼華厳宗大本山東大寺。「おほらかに もろてのゆびを ひらかせて おほきほとけは あまたらしたり」。奈良を酷愛した会津八一の絶唱である。「南京新唱」などに古都を懐かしく詠んだ秋艸道人の歌碑が、大仏殿に向かう参道左側の木の間に立っている▼刻まれた歌のキーワードは「あまたらす」だろう。「あま」は宇宙、「たらす」は充足、充実するの意。盧舎那仏すなわち「おおきほとけ」は宇宙いっぱいに広がり、宇宙と同じ大きさだ―と。まさに華厳の教えそのものである▼その字体は「流麗だが、ひよわで哀愁を伴う平安仮名の概念を会津は明快に切り崩し、堅牢で抒情の澄む新しい仮名の美しさを、この碑で高らかに歌いあげた」とは書家・榊莫山氏の評言である▼さて今の世の中、宇宙規模で考えられる政治家や教育家はどれだけいるか。各分野で「あまたらす おおきほとけ」の出現を待ちたい。折しも、二月堂の修二会(お水取り)前行がスタートする。あす試別火(ころべっか)入り。(宏)

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