悠言録

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[2007年03月13日]

 東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)間もなく満行。大たいまつの炎が乱れ舞う火と水の儀式は1256回目の「お水取り」を終えた▼二月堂の前にある閼伽井屋(あかいや)の若狭井から御香水(こうずい)をくみ上げて本尊にお供えし、達陀(だったん)の妙法へ。達陀は梵語(ぼんご)だとも、韃靼国のダッタンだとも言われる▼「てふてふが一匹韃靼海峡を渡つて行つた」。奈良市出身の安西冬衛の一行詩「春」は、そんな響きを伝えるようだ。架空の海峡ではあるが、東大寺近くの水門町生まれの安西が、直接見聞したかどうかはともかく、潜在的に語感を宿していたことは考えられる▼「バッハだ」と小林秀雄が嘆息した達陀の行法。「そのなかに友海雲の沓(くつ)音もあらむとおもひこころ親しむ」と吉井勇は詠んだ。友とは華厳宗管長・東大寺別当を努め、<壷法師>とも称された名僧・上司海雲師▼その沓の音は芭蕉も聞いた。有名な「こもりの僧」の句で、よく「籠りの僧」か「氷の僧」かが論じられるが、海雲師は明快だ。きっぱり「いずれにしても駄作」(「獨語壷法師」)▼新庄町(現葛城市)出身の前川佐美雄に「達陀の行法いましさかりにて摩訶(まか)不思議の世ぞと目つむる」の作。お水取りは「寒さと暖かさとを隔てる一筋の垣のよう」と書いたのは奈良市生まれの作家・上司小剣。いよいよ大和路に本格的な春が来る。(宏)

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