悠言録

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[2007年03月18日]

 今年はきっと良いことが待っている。そんな澄み切った気持ちを抱いて春を迎えることができた▼東大寺二月堂修二会「お水取り」が終わった。大和路に春が来た。去る13日夜から14日未明にかけての約6時間、二月堂で「火と音と祈り」の真夜中の行法を参観した。その興奮が今でも熱く身体に残っている▼眼前を駆け抜ける松明の火の粉を浴びて無病息災をいただいた。京都の大学の先生たちと一緒にほの暗い内陣に座した。練行衆の声明が堂内を余すことなく充(み)たした。荘厳に、高く低く、変幻自在に、美しく、妙なる調和を持って▼法螺貝(ほらがい)が吹き鳴らされ、鈴が打ち振られ、木沓のリズミカルな音が絶え間なく響きわたる。僧が走り、五体を激しく板に打ちつける。お香水(こうずい)の一滴をいただき、口に含んだ時のありがたさ。ハイライトは「だったんの秘法」だ。異形の姿に変わった僧たち。狭い堂内で松明の火の粉を舞い散らせては去り、現れては炎を振り回す。その迫力に息を忘れた▼僧たちは祈り続けた。人間の犯した罪の許しを乞(こ)うた。戦禍で犠牲になった人、阪神淡路大震災など自然災害で難を受けた人たちの鎮魂を願った。この奈良の二月堂の一隅から、世界の平和と人々のしあわせを祈った▼東大寺の僧たちは、1300年間、ひたすらに祈ってくれた。俗世がそれを何度裏切っても、ただ、仏と人間を信じて―。私は涙が出た。(水)

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