悠言録

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[2007年04月30日]

 堀辰雄の『大和路・信濃路』を、なつかしい思いで読み返した。中でも「十月」という作品には、私が好きな奈良に住んで27年になる根拠のようなものが書かれてあった▼「日暮れころ、また高畑のはうに往つて、ついぢの崩れのあるあたりを歩いてきた。尾花が一めんに咲きみだれ、もう葉の黄ばみだした柿の木の間から、夕月がちらりと見えたり、三笠山の落ちついた姿が澁い色をして見えたりするのが、何んともいへずに好い」▼堀が奈良を写し取った素晴らしい一枚のスケッチである。私もこのスケッチの風景にひかれて、27年前に大阪から奈良へと移り住んだのではないか。そして今も、ぞくっとするような風景に対面する▼河瀬直美監督と、ならまち文庫の宇多滋樹が発行するフリーペーパー「組画&ならまち文庫新聞」(05年12月1日付)1面に、河瀬と歌手のUAの対談が掲載されている▼「河瀬…私は奈良に生まれ育っているから、それが日常という平凡な生活の一部としてあって、あまり奈良を感じなくなるねんな/UA…でも奈良公園の鹿は神々しいよな。世界の中でもいい場所だと呼べると、私は思っているから、神聖な場所としてあってほしい。…奈良があるから、東京にもおれると思う」▼私は時々、生まれ育った大阪のドヤ街で、160円の赤ビールのアテにホルモン焼きをしこたま食べて、なつかしい奈良に帰ってくる。(し)

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