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火葬場移転 公約ほごに貼る膏薬なし

2012年10月12日

論説委員 黒田高弘

 「なんと(710)大きな平城京」「いい国(1192)つくろう鎌倉幕府」同様、必ず語呂合わせで覚える歴史年号が「白紙(894)に戻す遣唐使」。唐の衰退、新羅との関係悪化などの諸事情を鑑み、菅原道真が遣唐使の停止を求めたのは有名な話。この道真、九州の大宰府に左遷された際、ハスの茎と漢薬(中国の薬)を調合して痔の薬を作り、猟師の病気を治したという話もある。
 道真でも1回きりの白紙建議なのに、これほど白紙に戻す政治家も珍しい。仲川元庸奈良市長だ。今号で報じた火葬場移転問題では昨年1月、「白毫寺地区外での移転を確約申し上げます」と公文書で約束。同年2月には移転を求める地域住民に対し、「平成22年度からの着工に向け移転したい。候補地は10カ所ある」、6月にも「候補地選定は難航しているが、26年度までに着工したい」と明言。3度にわたり、新火葬場については移転の意向を示してきた。
 にもかかわらず、旧ドリームランド跡地での新火葬場建設計画を発表後、近隣住民から反対署名が寄せられると白紙撤回。白毫寺地区も含め市全体から候補地を探すとの方針に転じた。加えて、昨年12月の市議会での答弁については「市議にあおられた」と言い訳する始末。自分が発した言葉への無責任さはこの上ない。
 今年7月にはこんな話も。近鉄大和西大寺駅南地域に計画されていたコミュニティ施設の建設について、地元との協議のないまま民間保育園誘致を進めようとし、地元が猛反対。仲川市長はいったん凍結させることを約束し、「混乱を招いた」と謝罪。これに似た事案として昨年、市内11カ所にある市役所の連絡所を3つに統廃合する意向を自身のブログで発表し、議会や住民が反発。これを受けて「連絡所廃止計画は、いったんゼロベースに戻す」と白紙になった。
 この短絡的な言動は、就任以来たびたび話題に上がってきた。にもかかわらず、反省もせず同じことを繰り返す所業は、仲川市長が掲げる「市民が主役の政治」には遠くかけ離れている。
 平成21年の市長選で掲げた「奈良マニフェスト」で仲川市長は「約束したことは、必ず実現し、(中略)。私は、市民の皆さんの声に耳を傾け、しがらみのない若い力で、新しい風を奈良に送り込みます」と宣言。自身のブログの「マニフェスト2012」(9月2日更新)でも、「『お願いから約束へ』選挙の形が変わり、政策本位の候補者選択が浸透する中で、ベースとなるのはやはり信頼関係です。市民との約束を全力で実現する政治を、市民がしっかりとチェックし、時には苦言を呈すことが『良い政治』を築き上げる唯一の方策だと考えます」と記している。
 来年7月には改選を迎える。このままもし仲川市長が再選すれば、火葬場移転をはじめとして諸問題が棚上げされ続けるのではと疑心暗鬼に陥っている市民も多い。だがこれは仲川市長自身が招いた結果でもある。
 「公約」をほごにしておきながら、きれいごとを並べる仲川市長に貼る「膏薬(こうやく)」は、もうないかもしれない。信頼関係が大切だとしながら、市民との約束を守らない仲川市長を、市民はしっかりとチェックする必要がある。

  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
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