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奈良市長選 政策を明確にし論争を

2013年05月17日

論説委員 黒田高弘

 現職に対し新人7人が挑んだ平成22年11月の福岡市長選。自民・公明の支援を受けた無所属新人が現職に大差をつけて当選した。
 現職は民主・国民新の推薦、社民の支持を受けていたが、当時の民主党政権は、尖閣諸島での中国漁船衝突事件の対応の悪さに批判が高まっていた。
 一方の現職は行財政改革を積極推進し、市債残高を縮減するなどの実績はあったものの、公約に掲げたこども病院の人工島への移転事業の見直しをほごにしたことなどが響いた。
 7月21日実施予定の奈良市長選はこの福岡市長選によく似ている。現職の仲川元庸市長に対し新人6人が挑む構図ができあがり、新人らは総じて仲川市長に能力欠如のレッテルを貼る。
 仲川市長が市長選に出馬した際に掲げた公約「奈良マニフェスト」。昨年度までの進捗(しんちょく)状況を市のホームページで見ることができる。「行政のムダゼロ」の項目で、「不要な事業を廃止・縮小し、37億円の政策予算を生み出す」という公約があるが、これに対し、「平成24年度に市民課の窓口業務の民間委託を実施しました」としている。窓口業務は行政のムダなのか。事業の整理合理化、人件費削減の矛先が窓口業務というのであれば、市役所そのものの存在を否定しているかのようだ。
 仲川市長と市職員のあつれきもかなり漏れ聞こえる。市長である以上、市役所は自分の職場である。その職場を否定しつつ、労働者をうまく使いこなせないようであればトップの資格はないと言わざるを得ない。
 最大の懸案事項になっている火葬場の移転。福岡市の場合、現職は当初、人工島への移転を見直すとしていたが、推進にかじを切った。仲川市長も移転候補先は10カ所以上あると大風呂敷を広げたにも関わらず、「歴代の市長ができなったことを、自分の代でできるはずがない」と開き直る始末。このような状況で再選を目指すのであれば、火葬場問題はさらに4年間解決せずに進むということになる。
 マニフェストにこだわり続けた4年間だった。市民税の1%をNPO法人に交付する「奈良版1%条例」は議会で否決されながらも、公約実現のため躍起になっている。ここまでマニフェストの実現にこだわるのであれば、ぜひ火葬場移転問題についても公約でどのような方針で進むのか示してもらいたい。そしてその公約実現に向け躍起になってもらいたいものだ。
 現職だけの問題ではない。挑む新人6氏も同様だ。仲川市政に「NO」を突きつけるのであれば、自身はどういう市政運営を進めていくのかきっちりと示さなければならない。新人6人が一斉に街頭で誹謗(ひぼう)中傷、批判合戦を繰り返すようなことになれば、耳が痛くてしようがない。
 今、ちまたでは「死語辞典」という書籍が流行している。政権与党だった民主党の失政により「マニフェスト」という言葉は死語と化したとする人もいる。「マニフェスト」は死語になれども、「やる」と明言した以上、実行できなければ、政治家ならずとも人として信用に値せず、「お呼びでない」「ハイそれまでよ」と言われるに違いない。

  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
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