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観光資産は誰のものか 県民が主役の場を

2014年07月14日

論説委員 染谷和則

奈良観光の象徴・猿沢池の周辺が変容を続けている。老舗旅館が廃業し、建物が取り壊された。三条通は新築マンションの建設ラッシュ。変わらなかった猿沢池の水面に映す風景は、そうではなくなってきている。また近年は外国人観光客の来訪が多くなってきている。猿沢池をはじめ、奈良の観光資源は、果たして「誰のためのものか」を考える時が来ているのではないか。
 創刊116周年を迎える本社が昭和30年8月から開催してきた「納涼猿沢池盆踊り大会」は、2日間の開催で計10万人が訪れる奈良市の夏の風物詩だった。しかし、平成16年の第49回開催を最後に途絶えている。池の中心部にやぐらが立ち、500を超えるちょうちんが周囲を彩る猿沢池を覚えている方も多いだろう。
 本紙記者が周辺住民や商店街事業主を対象に行ったアンケート調査では、「奈良の盆踊りと言えば猿沢池だった」など、8割以上の人がこの盆踊りの復活を「望む」と回答している。奈良を象徴する場所で、奈良県民のために開かれるイベント再開の声が高まっているようだ。
 またこの盆踊りを知らない人でも「うわさでは聞いた。復活するならせひ参加したい」「盆踊りは日本の伝統文化。最近減ってきているのでぜひ復活してほしい」という声も聞かれ、変わり行く猿沢池周辺で何か奈良らしいイベントの開催に期待が持たれているようだ。
 神社仏閣、歴史資産、景勝地…。これら奈良に豊富にある観光資源を求めて多くの人たちが奈良に訪れる。これらの資産の活用に対する意識のほとんどが、外に向けられているのが現状だ。つまり、資産は訪れる人に見せるものという意識ばかりが働いている。
 観光立県の奈良はこういった意識が高い。これと相反し、文化財保護などの観点から埋蔵物調査、建築物の高さ制限など、経済活動の分野で県民は牴翹瓩鬚靴討い詆分が多くある。猿沢池周辺はこれらの規制が多くかかる地域。本社主催の盆踊りも厳しい規制を乗り越え、開催されてきたと伝わる。
 県民のこれら規制に対する牴翹瓩世韻任覆、奈良の資産が県民のために使われる場面があってもいいのではないか。奈良の資産を活用する意識を外側だけでなく、内側にも向ける時が来ているのではないか。
 地域の最小限の核は自治会であり、その上に小学校区、中学校区がある。しかしそれぞれの地域に伝わる行事や風習が姿を消しつつある。その大きな理由が少子化の問題だ。祭りの日の主役の子どもたちを楽しませる。こんな場面が少なくなってきている。
 盆踊りを知らない子どもたちも増えている中、地域の風習と行事を伝えていく場があることが望ましい。また猿沢池という奈良のシンボルを、規制や制限の中で守っている県民が、そのステージで主役になれる日が年に1度くらいあってもいいのではないか。
 県民、内側が活気にあふれ元気でなければ、観光で訪れる外側にそれは伝わらない。奈良の主役は県民。われわれの資産を有効活用することを本気で考えなければならない。

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