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伝統文化の伝承 行政の役割は重大

2014年07月25日

主筆 藤山純一

 神秘の湖・十和田湖があり、藩政期には南部盛岡藩に属し、鉱山と豊富な森林資源に恵まれた秋田と津軽との藩境に秋田県鹿角郡小坂町がある。
 明治時代、日本有数の鉱山の町として栄え、鉱産額日本一を記録する大鉱山に発展、当時としては最先端となる電気や上下水道設備、小坂鉄道の敷設、総合病院など都市機能が整備され、小坂町は2万数千人を超える秋田県第二の都市となった。
 その小坂鉱山の厚生施設として明治43年に誕生したのが、和洋折衷のモダンな芝居小屋「康楽館」である。外観正面は白く華麗な下見板張り、上げ下げ式窓と鋸歯(きょし)状の軒飾りが規則正しく並び、内部天井には八角形の枠組みの中央にチューリップ型電灯が輝く洋風建築。館内は、典型的な江戸期の芝居小屋のスタイルで、桟敷や2本の花道、その花道の床を切り抜いた切穴(すっぽん)に義太夫・囃子部屋などがある全国的にも珍しい芝居小屋だ。
 こけら落としには大阪歌舞伎の尾上松鶴一座が公演、その後演劇や映画、寄席などが催されにぎわったが、テレビの普及や施設の老朽化などで昭和45年、一般興業を中止した。しかし、復活を願う町の人たちの熱い思いに小坂町が応え、鉱業会社からの無償譲渡後に修復工事に着工、61年に和洋折衷の日本最古の芝居小屋としてよみがえった。
 平成14年には国重要文化財に指定され、22年には創建100年を迎えたのである。入場者には館内見学ツアーも実施。役者の落書きがある楽屋や回り舞台の奈落(床下)なども身近に見ることができるのが特徴だ。
 ただ、康楽館の運営は大変だ。バブル期にようやく収支がそろったがその後は赤字続き。24年には町が90%出資の第三セクターに指定管理委託し新しい人材も登用し運営している。
 さらには小坂鉄道をレールパークとして復活、国重要文化財に指定されている明治38年創建の豪壮華麗な建築物「小坂鉱山事務所」を康楽館近くに移築し「明治百年通り」として現在整備中。町が先頭に立って観光資源の掘り起こしに躍起だ。
 これに比べ、1300年の歴史を誇り、豊富な文化遺産に恵まれた奈良はどうか。地元の盛り上がりは、行政のリーダーシップはと考えれば、いずれも他人任せではないか。
 観光立県というならば、ふるさとを知らずしてどうして奈良を訪れる人をおもてなしできるのか。ふるさとを誇りに思わなくてどうして観光客を歓迎できるのか、疑問でならない。
 そんな中でかつての花街・元林院復活プロジェクトが始動した。本社が49回にわたって実施してきた「猿沢池盆踊り」の復活の世論も高まりつつある。一方で、昭和25年には「奈良音頭」がつくられたが、平成22年の平城遷都1300年祭に奈良市がCDを製作し平城宮跡で踊ったきりである。
 今は同市でこのCDの貸し出しをしている程度で、市民に歌い踊り継いでもらおうという姿勢は全くみられない。文化遺産の継承は市民からの盛り上がりは当然必要だが、行政が予算をかけ伝統文化を守り、引き継いでいくことが最も大事だ。

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