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無戸籍・不就学児問題 根本断ち切る方策を

2015年05月29日

主筆 藤山純一

 出生後、親が戸籍も作らず、学校にも通わせてもらえず、社会の枠外に置かれた無戸籍・不就学児がいることをご存じだろうか。子どもの権利が保障されている先進国日本で、なぜこのような境遇の子どもが存在するのか、疑問でならない。
 当然、子を出生した場合、出生の届け出をすることによってその子が戸籍に記載される。しかし、何らかの理由により出生の届け出をしなかったため、戸籍に記載されない子が存在するという。
 昭和63年、東京都内で2歳の子が死亡し、無戸籍の兄妹4人が親に置き去りにされていたショッキングな事件があったが、この事件を題材にした映画「誰も知らない」(平成16年、是枝裕和監督)は大きな反響を呼んだ。この年のカンヌ国際映画祭で俳優の柳楽優弥さんが最優秀男優賞を受賞したことは記憶に新しい。
 出生した子の法律上の父と血縁上の父が異なる場合、血縁上の父を父とする出生届書を提出しても、出生の届け出は受理されない。さらに「離婚後300日問題」がある。母が元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合には、その子は民法上元夫の子と推定されるため、血縁上の父を父とする出生届は受理されず、戸籍上は元夫の子として扱われる。
 このような戸籍上の扱いを避けるために、母が子の出生の届け出をしないことにより無戸籍の子が誕生する。生後、親に隠され、戸籍がなく、学校にも通えず社会から存在を認知されないまま育った子どもたち。まさに人間の尊厳を否定されたに等しい。
 生活貧困者の増加やDV(家庭内暴力)、地域社会の崩壊による親子の孤立などで、無戸籍・不就学児は増え続けている。見つかった子どもたちは氷山の一角。どこに、どれだけいるのか、誰も知らないーというのが現状ではないか。
 何とか救い出されても通常の社会生活を送れるようになるにはかなり時間がかかるだろう。児童相談所の相談や一時保護の対象は18歳未満。その後、社会にどのように適応していくのか大きな壁が立ちふさがる。
 こうした子どもたちをいち早く見つけ救出し、社会復帰させるための法的整備を行い、人として生きていけるための公的な救済手段をぜひ早く構築していただきたい。
 児童虐待の現状も深刻化している。平成25年度の県中央子ども家庭相談センターに寄せられた虐待の相談対応件数が過去最高となった。
 生まれてきて限りない青空に みつめられたから
 きみたちは生きる
 生まれてきて手をつなぐこと を覚えたから
 きみたちは寄り添う
 生まれてきて失うことを知っ たから
 それでも明日はあると知った から
 きみたちは誰も知らない自分 を生きる
 詩人谷川俊太郎さんが映画「誰も知らない」に寄せたメッセージだ。無戸籍・不就学児は、児童虐待にも通じる問題。発生の根元を断ち切る方策が急務だ。 

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