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にぎわいの創出 市民抜きではできぬ

2015年06月19日

主筆 藤山純一

 JR奈良駅から三条通を上ると右手に猿沢池、左手に興福寺の五重塔に出合う。真っすぐ進むと奈良公園、春日大社、南に下ると元興寺、「ならまち」があり、この周辺は奈良観光の一等地だ。
 その猿沢池のすぐ南に「ならまちセンター」がある。もともと市庁舎があった所だが、38年前の昭和52年に当時の鍵田忠三郎市長が施設の老朽化などに伴い庁舎を現在の奈良市二条大路南1丁目に移転し、跡地に市民の交流施設としてこの「ならまちセンター」が開設された。
 だからこそ、定員300人の市民ホールや中央図書館、市の連絡所などを併設した地域のコミュニティーセンターとして親しまれてきたのである。
 ところが奈良市の仲川元庸市長は昨年度、利用者の声も聞かずに、最も稼働率の高い1階の企画展示コーナーを観光客向け知的上質空間にリニューアル改修するとして、一方的に閉鎖・廃止にしたのである。(昨年10月31日付既報)
 それもこの方針転換に激怒した市民が使用継続を求める約2500筆の署名を持って何度も面会を求めたにもかかわらず、一度も会うことなく、「ならまちのにぎわいを創出するための一大拠点にする」と言って市民の要望を無視し、市民から貴重な交流スペースを奪い取ったのだ。
 そもそも「ならまちセンター」は、市総合財団が管理・運営する施設の一つ。それをわざわざ企画展示スペースなどがある1階部分のみを同財団の管理・運営から切り離し、市民の存続要望を無視して市の直轄事業にし、プロポーザルの公募とはいいながらも、結果的に多額の税金を投入し飲食店を誘致した。
 その影響で、同センター玄関前で同財団と喫茶室運営業務委託契約を結んでカフェを営業していた業者が契約切れとはいえ、たった1年半で撤退せざるを得なくなったのである。
 同財団も引き続き契約更新する予定だったが、市から管理・運営委託を打ち切られたため手の打ちようがなかったという。しかし、少なくとも5年ぐらいは継続契約してもらえると見込んで設備投資した業者にとっては晴天の霹靂(へきれき)。たった1年半で閉店させられるようなカフェを誰がするだろうか、非常識も甚だしい。
 今回のプロポーザル募集要項にも、この「ならまちセンター」1階を「ならまちのにぎわいを創出するための一大拠点としてふさわしい整備を行う」としているが、市民の交流の場を奪い、情報発信拠点も兼ね備えたカフェを運営していた業者も撤去させて、どうしてならまちのにぎわいが創出できるのか。
 さらにこの募集要項では、施設には「地域のアイデンティティー形成に資する役割」を求めており、地元市民の協力なくしてどうして地域のアイデンティティーを形成するのか、疑問でならない。
 仲川市長は猿沢池周辺の花街・元林院の復興にも乗り出したが、旗を揚げただけ。地元で取り組んでいるグループとの連携もない。観光客を出迎えるのは地元市民であることを忘れてはならない。

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