論点

トップ論点一覧 > 論点

仲川市政2期8年 住民投票で信を問え

2016年07月01日

論説委員 黒田高弘

 「わが国を次の目的地に導く船長役は、私にはふさわしくないと考えている」―。国民投票で欧州連合(EU)離脱が多数となったことを受け、10月までに辞任する意向を示した英国のキャメロン首相。自身は「残留」を掲げており、国民の半数以上が「離脱」を選択したことで、潔く引くことを決断した。
 1年前の6月17日、大阪市を廃止し、5つの特別区に分割する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票が行われ、市民は「大阪市存続」を選択。「負けは負け」と敗戦の弁を述べた橋下徹大阪市長は政界を引退した。
 ミリオンセラーのヒットメーカーで、出版プロデューサーの川北義則氏は著書『引き際の美学』で、「犹呂瓩覘瓩茲蠅皚狃わる瓩曚Δ難しい」とし、今の日本は、引き際の潔さ、去り際の美しさを失っていると指摘する。
 前述の2氏に対し、みっともない引き際を見せたのが、舛添要一東京都知事。政治資金の公私混同疑惑を追及されるも、辞任を拒み続けた揚げ句、都議会から不信任を突き付けられ、「陥落」した。辞意表明後は、マスコミに対してもいっさい口を聞かず、公人としての職務をまっとうすることなく、都庁を逃げ去った。
 仲川元庸奈良市長の誕生から来年で2期8年となる。市議会からは『失われた8年』との厳しい声も上がる。初当選直後の記者会見で市長室を市庁舎1階に移転してガラス張りにすると発表するも、約2週間で前言撤回という稚拙発言にはじまり、一方的な押し付け、身勝手な白紙撤回と数えればキリがないほど、独善的な市政運営に終始。この8年間で何度、「市民無視」「議会軽視」との見出しが躍ったことか。
 その最たるが、新斎苑の移転問題。初当選直後、仲川市長は前市長時代に移転候補地に挙げられていた横井町の山林への移転構想を白紙撤回。2年後の23年2月には「候補地は10カ所ある」と明言し、翌年3月には移転先として奈良ドリームランド跡地を新たな候補地として公表するも、地元の反対に合い、頓挫する。
 25年2月には、白紙撤回した横井町の山林を再び候補地に。翌月、地元自治会から建設に反対する請願書が提出されたが、これを無視する形で同年7月の市長選目前に同地での火葬場のイメージ図を突然公表した。
 新斎苑建設の関連予算を今年度予算に盛り込んだ仲川市長だったが、安全面の問題や地元住民の反対などもあり、議会は2会派から出された修正案を賛成多数で可決。経費4800万円などが削減された。5月22日には初の市民説明会が開かれたが、市民からは見直しを求める声が続出した。
 ここまで来れば、英国や大阪府のように住民投票を実施すべきではないか。仲川市長は「議会は批判するばかりで対案が出ない」と議会批判を繰り返しているようだが、「横井町の山林に移転」との方針を示したのは市長自身。移転の是非を住民にうかがい、「NO」が出されれれば潔く身を引くのが「引き際の美学」。無理やりかじを握る船長を市民は望んでいない。

  • 凛と咲く〜輝く女性たち
  • バックナンバー購入のご案内
  • 会社情報
  • お問い合わせ

ホームニュース論点悠言録

バックナンバー購入会社情報お問い合わせ

当サイトに掲載の記事・写真・図版などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権並びに国際条約により保護されています。

Copyright Nara Nichinichi Newspaper