論点

トップ論点一覧 > 論点

陸上自衛隊誘致 明日の平和のために

2016年11月11日

記者 梶田智規

 航空自衛隊奈良基地が今年で開設60周年を迎えた。5日に記念式典が開かれ、6日には華麗な編隊飛行を披露する専門チーム「ブルーインパルス」が30年ぶりに古都・奈良の空を舞った。これをきっかけに、将来自衛官を夢見る少年少女が増えてくれればという関係者の思いも込められていただろう。
 現在、県も含め全国的に自衛官募集環境は厳しい状況にある。その理由として、東日本大震災の効果の薄れや自衛隊は危険という意識の高まり、組織的募集に対する部外圧力の高まりなどが挙げられる。これらの状況を受けて「平成28年度版防衛白書」でも、巻末に防衛省や自衛隊の基礎的知識やイベント情報、自衛官募集案内などを掲載し、国民が身近に感じることができるように努めている。
 近年、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増すばかりだ。北朝鮮による核実験や弾道ミサイルの発射など、平和や安全を脅かすさまざまな事態が発生。自由で民主的な日本を守るための学生団体「SEALDs(シールズ)」らの反対デモもあったが、昨年の通常国会で政府は平和安全法制関連2法案を国会に提出した。2法案は衆参両院において戦後の安保関係による法案審議で最長となる計約216時間の審議を経て、昨年9月に成立。今年3月に施行された。
 また、「米国第一主義」を掲げるドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利したことで、日米安全保障に関する影響が懸念される。トランプ氏は以前、対日安全保障の負担軽減の観点から「米軍の駐留経費を日本が全額負担しなければ撤退させるべき」などと主張し、日本の核保有まで容認しようとする発言もしていた。これにより、国内で抑止力として核を持つべきかどうかという議論が活発化する可能性も少なからずある。
 今後ますます、自衛隊の役割が重要視されるなか、全国で唯一、陸上自衛隊駐屯地のない奈良県への駐屯地誘致に向け機運が高まっている。設置場所の候補とされているのは五條市で、実現すれば、将来発生が予想されている南海トラフ巨大地震など大規模災害が起こった際に、迅速な対応が可能となる。紀伊半島のほぼ中心に位置する同市へのヘリポートを含む駐屯地の設置は、県民のみならず紀伊半島全域の地域住民に安心と安全を与えることになるだろう。県の郷土部隊が生まれることで、自衛隊募集環境の改善や、県民の防衛、防災意識の向上などにもつながることを期待したい。
 奈良基地開設60周年の特集で取材した、航空自衛隊幹部候補生学校長兼奈良基地司令の荒木哲哉空将補、菅野厚志自衛隊奈良地方協力本部長、前田武県防衛協会長の3氏は「自衛隊の堅苦しいイメージを払拭(ふっしょく)し、『開かれた自衛隊』として県民に愛される存在にならなければいけない」と口をそろえた。
 国民と自衛隊が同じ目線で関わり合い、国民全員が適度な緊張感を持って防衛の意識を持たなければ、平和を維持することは困難な状況になりつつある。なにもしなくても明日は来るが、その明日が平和であるという保障はない。

  • 凛と咲く〜輝く女性たち
  • バックナンバー購入のご案内
  • 会社情報
  • お問い合わせ

ホームニュース論点悠言録

バックナンバー購入会社情報お問い合わせ

当サイトに掲載の記事・写真・図版などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権並びに国際条約により保護されています。

Copyright Nara Nichinichi Newspaper