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福住小の活動 教育に集中的な投資を

2017年05月26日

論説委員 黒田高弘

 新聞記者という仕事の性質上、大学教授などの教育関係者や各種団体の代表などに取材する機会が多い。そういった有識者は皆、行政に対して「教育の強化・充実」が最優先と口をそろえる。今の子どもたちは自然や生活体験が少なく、学ぶ習慣が身に付いていない。結果、人やものと関わる能力が低下しているのだという。
 「ゆとり教育」を掲げて学習内容を3割削減した新学習指導要領の象徴として、平成12年度から小中高校の教育課程で「総合的な学習の時間」が導入された。子どもが自ら学び考え、問題を解決する資質や能力を身に付けさせるのが狙いで、教科書はなく、調査や実験、ボランティア活動など授業の内容は各校に一任するというもの。しかしその後、国際学力調査で順位が下がった主な要因に上げられ、「学力低下」につながるとの批判があり、授業時間が一部削減された。
 現在も賛否両論はあるが、個人的にはこの授業を重要視したい。親の立場として、我が子に高学歴という目に見える装備を与えたいと思うのは当然。実際にそれは社会への入口で大きな武器となり、選択肢を増やしてくれる。
 しかし社会の荒波に飛び込んだ後、求められるのは「学力」よりも「人間力」。自ら考えて行動し、人の気持ちをくみ取って対応できる人材が重宝される。知識や情報をインプットする能力よりも、それを上手にアウトプットする能力が社会では必要となる。実際、高学歴の新入社員が、仕事をする際の「ピント」がずれていて、まったく使いものにならなかったという経験がある。これにうなずいている読者は少なくないだろう。
 ただ「総合的な学習の時間」を実のあるものにするには、地域の理解と協力が必要不可欠となる。学校と地域が一体となって子どもたちに教育を施し、いい意味で「型にはまらない」人材を育成する。人工知能(AI)の技術が発達し、数十年後には6割以上の雇用が奪われると危惧される今、AIが持たない「人間力」を高める教育環境の整備は急務といえる。
 天理市は現在、山間部に位置する福住校区を中心とした高原地区で、「『住んでよし!訪れてよし!』を体現する高原のさと」をコンセプトに、新たなまちづくりを進めている。市立福住小学校では今年度から「小規模特認制度」を実施し、コミュニケーション力の育成に重点を置いた特色ある教育を展開。地域住民と一体となって地域の活性化に取り組んでいる。
 同校には、学校や地域の特色に魅力を感じた8人の生徒が校区外から通っている。通学は不便だが、「スカイプ」を利用した英会話の授業や、地域の団体などが主催する体験学習が子どもたちをたくましく成長させてくれると親も感じたのだろう。
 先日取材で、総務相や鳥取県知事を務めた片山善博氏が、地方創生の重要ポイントを「若者の流出を防ぎ、人口減少に歯止めをかけること」と説いた。教育が充実している地域には自然と人が集まる。行政はつまらない政策に税金を使わず、教育に集中的に投資するべきだ。

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