論点

トップ論点一覧 > 論点

受動喫煙対策 「選択できる自由」を

2017年06月02日

論説委員 黒田高弘

 5月31日の「世界禁煙デー」から1週間は禁煙週間と定められていることを、読者の皆さんはご存じだろうか。今年度のテーマは「2020年、受動喫煙のない社会を目指して〜たばこの煙から子どもたちをまもろう〜」。近年、「受動喫煙」をはじめとしたたばこ対策は重要な課題になっている。
 たばこに対する意識が高まったのは約15年前。日本は平成16年3月、世界保健機関(WHO)の「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に署名。その際、日本を含む47カ国から、たばこ規制条約の実施状況に関する報告書が提出されたが、日本の喫煙率は先進国の中でも極めて高く、WHOの26年調査結果でも、受動喫煙対策は「最低レベル」。
 このような状況の中、厚労省は今年3月、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、「健康増進法改正法案」を今国会に提出。しかし自民党が飲食業界への影響などを理由に規制を緩めるよう求め、現在も調整が続いている。
 牛丼チェーン店の吉野家を展開する吉野家ホールディングスの安部修仁会長はある週刊誌で「個人営業の飲食店にまで一律に課すのは、あまりに現場感覚が欠如している」と厳しく指摘している。
 また法案にもあるように、喫煙室の設置によって利用者の選択肢を確保すればいいとの意見もあるかもしれないが、現状そのようなスペースと資金力がある大手企業は、すでに禁煙あるいは分煙に移行。それができない個人営業の飲食店が、逆に愛煙家を囲い込むことで、大手チェーンに対抗する強みのひとつとしている側面もあるとしており、お客が好みに応じた店を「選択できる自由」を持つことが大事としている。
 安部会長の言葉に賛同したい。受動喫煙防止は世界的にみても時代の流れではある。だからといって、国が一律に禁止するというのは安直すぎる。その一方で、小規模(延べ床面積30平方叩砲淵弌爾覆匹蓮規制の対象外。小規模施設では、喫煙室を設置するスペースがないなどがその理由だそうだが、小規模ほど人が密集し、受動喫煙リスクが高まるはずであり、今はやりの獨崚戞覆修鵑燭)瓩と、うがった見方もしてしまう。
 福岡県北九州市の産業医科大学研究チームの調査結果によると、全席禁煙を実施したファミリーレストランで売り上げが伸びたことがわかった。店舗の一部に専用喫煙室を設ける「全席禁煙」と、喫煙席と禁煙席を壁で仕切る「分煙」の店で、売上の変化を調べた結果、全席禁煙の店舗は分煙時と比べ、3・4%売り上げが増加。分煙の店舗は、ほとんど変わらなかった。
 青少年の喫煙、副流煙による病気リスクなど受動喫煙対策は取り組むべき課題だが、飲食店の一律禁煙には違和感がある。「世界禁煙デー」の夜、近鉄奈良駅周辺の居酒屋では愛煙家がビールを片手に、もう一方の手でたばこをくゆらせながら、来月に迫った奈良市長選談議に花を咲かせ、周囲も煙に嫌悪感を感じている人はいなかった。愛煙家は愛煙家の、嫌煙家は嫌煙家の犁鐓貊雖瓩あっていい。

  • 新生奈良研究会 新年度総会・記念講演会 ビジター参加募集
  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
  • 応援しよう地元の バンビシャス奈良×奈良日日新聞 奈良日日新聞はチーム準オフィシャルメディアです
  • 奈良日日新聞 購読・購入のお申込み
  • 広告のご案内
  • 奈良日日新聞 会社情報


  • ならにちホームページガイド
  • つぶやきで奈良をもっと楽しくしよう!ツイ奈良交流会

ホームニュース紙面内容紹介論点悠言録

購読のお申し込みバックナンバー購入のご案内広告のご案内会社情報個人情報保護

当サイトに掲載の記事・写真・図版などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権並びに国際条約により保護されています。

Copyright Nara Nichinichi Newspaper