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太子道推進協解散 太子の思い踏みにじる業

2017年07月07日

論説委員 黒田高弘

 「聖徳太子」を「厩戸王(うまやどのおう)」に―。文部科学省が2月に公表した次期学習指導要領改定案で「聖徳太子」の名前が教科書から消えることが話題に上がり議論が噴出。結果、文科省は学校現場に混乱を招く恐れがあるとして、「聖徳太子」の名前を残すことを決めた。
 歴史の教科書に登場するほどネームバリューのある聖徳太子。十七条憲法の制定など、天皇を中心とした中央集権国家体制の確立と、日本における仏教の隆興に尽力した。
 その日本のスーパースターともいえる聖徳太子にスポットを当て、来たる2021年の1400年御遠忌に向けた広域観光を目指し昨年7月7日に発足した「太子道日本遺産認定推進協議会」。今年4月の認定に漏れ、斑鳩町の身勝手な退会に伴い、1年を持たず解散した。
 斑鳩町の退会理由は今号に既報通りだが、小城利重町長には「すでに世界遺産に登録されており、そもそも日本遺産は必要なかった」との思惑が見え隠れする。当初から乗り気ではなく、王寺町に誘われたから仕方なくメンバーに加わったということだろう。何とか「太子道」を起爆剤に観光活性化の道を目指し、集った構成市町村にとっては、あまりにも不遜な対応だ。
 今後は、自身が先頭に立って新たな枠組みを作る意向を示しているが、それであれば推進協議会発足時から、会長職に就き、タクトを振るえば良かった。協議会設置にあたり、平井康之王寺町長は小城町長に会長職就任を要請、一度は了承したにもかかわらず、発足ぎりぎりになって翻意し、平井町長が会長を務めることになった。
 結果、協議会の努力むなしく不認定が決まると突如として退会届を提出。6月14日の町議会総務委員会では町長以下副町長、教育長までもが協議会の努力不足を指摘し、町の行為を正当化。斑鳩町が出席しないまま、協議会は解散した。「(斑鳩町は)この場で退会理由をきちんと説明するのが筋だったのでは」(平井町長)と批判されても致し方ない。
 十七条憲法では、第1条で「和を以(も)って貴しとなす」、第17条で「それ事は独りさだむべからず。必ず衆とともによろしく論(あげつら)ふべし」とうたい、和を大切にし、大事なことは一人で決めずに、必ず皆と相談すべきと諭している。
 また、聖徳太子は「豊聡耳(とよとみみ)」とも呼ばれ、豊かな耳を持っていたともされる。豊かな耳とは、人の話を聞き分けて理解できるということであり、「聞く耳を持つ」にもつながる。
 一度は「太子道」を軸に、聖徳太子1400年御遠忌に向けた広域観光を目指し、協議会に属した以上、小城町長は和を大切に、独断先決するのではなく実際に協議会に出席し、構成市町村や団体の思いに耳を傾け、今後の方向性を議論する必要があったはずだ。
 「和の精神」をもって天皇を中心とした中央集権国家の確立を進めた聖徳太子。今回の一件は太子の思いを踏みにじる行為で、斑鳩町を中心とした体制の確立などできるはずもない。

  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
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