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奈良市長選 県市安定的協調関係へ

2017年07月14日

論説委員 田村耕一

 今回の奈良市長選は、2000票余りの僅差で現職の仲川元庸氏の3選となった。まさに辛勝であった。選挙戦を総括すれば、前生駒市長の山下真氏、自民党推薦の朝廣佳子氏に流れた票の多くが、仲川市政への反対票であったと見られ、その反対票が山下氏に集約されなかった分、仲川氏に有利に展開した選挙であったと分析される。
 ただ実質的には、仲川氏と山下氏の一騎打ちの様相を呈していた。とりわけ、市西部を中心に山下氏が票をとりまとめ、終盤は、この地域では山下氏が優位に立っていたと見られる。この背景には、山下氏を担ぎ出した馬淵澄夫衆院議員の存在がある。馬淵氏は、前々回の市長選に無名の仲川氏を担ぎ出し、民主党(当時)の風に乗せて勝利した。また、渋々であったらしいが前回も、自らの組織を活動させて当選させた。
 しかし、今回は仲川氏に見切りをつける格好で山下氏を担ぎ出した。巷間(こうかん)、その原因は、仲川氏を政治的にコントロールできなくなった、政界復帰を狙う山下氏と緊密になったから、などと言われているが、馬淵氏が次期知事選への出馬にターゲットを絞ったとする説がどうやら正解ではないか。
 2年前の知事選あたりから、仲川氏は、県の施策に協調する姿勢を執りだした。それまでは県には対抗的な行政姿勢であって、当時、生駒市長だった山下氏に傾斜する姿勢に終始していた。その顕著なものは全県的な広域消防体制に奈良市と生駒市だけが参加しなかったことである。
 しかし、近年の地方行政は、全国的に財政状況が厳しく、奈良市も例外ではない。市の安定的な運営や新規事業を展開するには、国、県からの支援が不可欠で、荒井正吾知事の行政手腕に否応なく頼らなければならないことが、仲川氏をして、大きくその政治姿勢を転回させたものと思われる。
 また、現在の生駒市は、山下氏の負の遺産といえる生駒市立病院、学研都市高山第2工区問題などの始末に大童(おおわらわ)である。この状況を見るにつけ、仲川氏はその政治姿勢を大きく転回したのではないか。換言すれば、県と奈良市の行政関係が良好に回転し出した訳であるが、この状況を良しとしない山下氏、次期知事選への出馬意欲をもつ馬淵氏の思いが重なり、協同して仲川氏に今回の出馬断念を迫った背景があるのではないか。
 さて、仲川氏が3選したことで奈良市の行政は安定するだろう。荒井知事は近鉄大和西大寺駅の立体化や、近鉄奈良線の地下埋設化、八条町のJR新駅設置など観光開発とまちの活性化に向けた施策を重層的に展開しようとしている。市はこれらの事業に協調して取り組んで行くべきであって、厳しい財政事情下における市の必然的な方向性でもあろう。
 ともあれ、今回の選挙結果は、奈良市の安定的な発展を願う市民の声とみるべきである。仮に、山下氏が当選しておれば、生駒市長当時に見られたように県との関係は対立的で最悪なものとなり、市民が悲嘆したであろうことは容易に想像できる。

  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
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