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[2017年09月08日]

 「逆境を転じて、その逆境をさえ、前進の一歩に加えて行く」―。きのう7日は、『宮本武蔵』などの著書で知られる小説家・吉川英治氏の忌日。小学校を中退し、いくつもの職業を転々とした苦労人が発した言葉だ▼県内で15人の死者を出し、現在も9人が行方不明となっている紀伊半島大水害から6年を数えた。今月3日に執り行われた五條市大塔町での慰霊祭には遺族や関係者約100人が参列し、犠牲者の名が刻まれた慰霊碑を前に、冥福を祈った▼今年6月下旬には、約5年8カ月ぶりに十津川村の風屋ダムで遺体が見つかり、同町の中西麻紀代さんであることがDNA鑑定で判明した。慰霊祭には中西さんの母親も参加したが「いまだ行方不明の方もいる。自分だけが喜ぶことはできない」と苦しい胸の内を明かした▼十津川村で母親を水害で亡くした市原光留さんは「今なお見つかっていない犠牲者のことを考えると風化させてはいけない」としながらも、「七回忌を迎え、一区切りにしたい」と後ろを振り返るばかりではなく、前を向いて生きて行くことの大切さを語る▼遺族にとっての6年は、われわれが考える以上に、つらく悲しい日々であり、あの日のことを忘れることは決してないだろうが、立ち止まっていては何もはじまらないのも事実▼生前、吉川はこんな言葉を残している。「今度も立派に乗り越えてみせるぞ。朝の来ない夜はないのだから」と。(虎)

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