論点

トップ論点一覧 > 論点

大和茶 インスタで茶文化復活を

2017年09月15日

論説委員 黒田高弘

 宇陀市榛原赤埴にある仏隆寺。通称狎蘿桜瓩噺討个譴觚内最大・最古の桜で有名なこの古刹は「大和茶発祥の地」と言い伝えられている。空海が806年に唐から帰国した際、茶の種子を持ち帰りこの地で栽培したのが、わが国における茶の発祥と言われ、寺には空海が徳宗皇帝から賜ったという茶臼と茶樹が現在も保存されている。
 日本茶の銘柄として著名なものに宇治茶(京都府)や八女茶(福岡県)などがあり、それぞれの地に、「発祥の地」碑が建ち、いずれも奈良同様、空海をはじめとする唐に渡った僧が茶の種子を持ち帰った逸話が残されているが、皇帝からの贈り物が残るのは奈良だけ。
 室町時代には奈良出身の茶人・村田珠光によって茶の湯の精神「わび茶」が誕生。江戸時代には仏隆寺の茶臼でこんな記録が残っている。宇陀松山城3代藩主の織田長頼が茶会を開く際、同寺の茶臼を借り返さなかった。すると茶臼に彫られていた麒麟(きりん)が、夜ごと城中で暴れ回り、長頼は臼を庭石に投げつけた。その時破損した部分は金で補修され、以来「金の茶臼」と呼ばれているという。
 茶の歴史では他の地に一歩抜きんでた感がある奈良だが、現在の茶生産量は全国7位。「大和茶」の知名度も「宇治茶」や「静岡茶」に比べれば劣る。その背景には、高齢化による生産者の減少に伴う、栽培面積や生産量の減少がある。加えて、大和茶の7割近くが仲卸業者の手によって宇治茶として市場に出回ってしまっている。
 このような現状を打破しようと、ティーファーム井ノ倉の茶師井ノ倉光博さんが、有機質肥料を主とした環境にやさしい土作りに取り組み、単一畑のなかの土壌が最高な一区画でのみ採取できる厳選された良質茶葉のみを使った高級かぶせ煎茶「大和茶プレミアム」を開発した。
 湧き水を使い丹念に蒸し上げるお茶は、茶葉の先端をぜいたくに使用。甘い新茶の香りと極上のうまみが堪能できるとし、高級ワインのように嗜好(しこう)品として世界的に評価され始めているという。
 まさに「プレミアム」。近年、さまざまな商品に「プレミアム」の文字が躍り、政府と経済界が主体となり働き方改革の一環としてスタートした「プレミアムフライデー」なるものも。導入企業は増えつつあるというが、実感がない人の方が大多数だろう。これらの影響もあって、「プレミアム」の文字にプレミアム感が薄れている中で、いかに「大和茶プレミアム」を発進していくかが問われている。
 海外で需要が増える日本茶だが、国内での茶葉消費量は右肩下がり。若い世代にとっては、お茶はペットボトルで飲むものだ。若い世代の今のトレンドは「インスタ映え」。SNSのインスタグラムにこだわりの写真をアップする行為だが、紹介されることで絶大な口コミ効果を生むという。
 いにしえより茶の最先端を歩んできた奈良だからこそ、現代の最先端を駆使し、急須で飲むお茶の素晴らしさを若い世代に伝え、逆輸入ではなく国内からお茶の素晴らしさを世界に発信してほしい。

  • 10月5日付新聞の事前予約はコチラ
  • 奈良日日新聞社は「Sport for Tomorrow コンソーシアム」の会員です。
  • LINE@で情報発信中!!
  • 凛と咲く〜輝く女性たち
  • 広告のご案内
  • 購読・購入のお申込み
  • 会社情報


ホームニュース紙面内容紹介論点悠言録

購読のお申し込みバックナンバー購入のご案内広告のご案内会社情報個人情報保護

当サイトに掲載の記事・写真・図版などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権並びに国際条約により保護されています。

Copyright Nara Nichinichi Newspaper