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買い物難民 県主導で問題解決へ

2017年11月17日

記者 梶田智規

 内閣府の調査によると、全国で65歳以上の高齢者がいる世帯の割合は平成26年現在、46・7%を占め、そのうち独り暮らし、夫婦のみの世帯は55・4%で過半数を超えている。30年前と比較すると20%以上増加。今後さらに加速することが予想され、「孤独死」や「買い物難民」といった問題もより深刻化していく。
 特に奈良県は全国的に見ても高齢化が顕著な地域だ。前述した問題に対して、より綿密で長期的な計画を立て、対策していかなければならない。しかし今回の「買い物難民問題」の取材では、県をはじめ行政に「危機感」は見て取れなかった。ここ数年の県・各市町村議会の議事録を見ても、同問題に対しての議論はほとんどされていない。
 小学生の頃、近所の中学生のお兄ちゃんの家によく遊びに行ったことを思い出す。家に行くと必ずお菓子やジュースをくれるおばあちゃんがいて、子どもたちに慕われていた。ただ腰や膝が悪く、調子が悪い日はあまり動けない。
 それでも子どもたちの顔を見ると、足を引きずってでもお菓子やジュースを用意してくれる。「今日はおなかすいてないからええで」、「寝ときや」と言っても聞かず、「おいしいものを食べることと、子どもたちが食べてる顔を見ることだけが今の楽しみやから」と言った笑顔は今でも覚えている。
 医療や介護など、「ほかに優先すべき事業がある」との意見もあったが、直接命に関わらない問題として軽視するのはどうか。栄養面での偏り、地域・人との交流機会の減少。そしてなにより、体の自由がきかず「娯楽」が少なくなった高齢者の楽しみの1つが、「食」なのではないだろうか。 
 近年、介護に疲れた夫や妻が相手を殺して自分も自殺するなど、高齢者の悲しい事件が増えている。県内でも今年9月、自宅のトイレで倒れた妻(当時72)を4日間放置して死亡させ、夫(当時75)が保護責任者遺棄容疑で逮捕された。夫は「妻を動かすことができず、様子を見るしかなかった」と供述。夫はなぜ救急車を呼ぶなり、知人や家族に連絡を取るなりしなかったのか。認知症で正常な判断ができなかったのか。詳細は明らかになっていないが、いずれにせよ高齢者の社会的孤立が招いた事件といえる。
 県が今月発表した「29年度県民アンケート調査結果」では、
日常生活で悩みや不安を「感じている人」の割合は78・9%。昨年度と比較すると2・2ポイント減少しているが、「自分の健康」についての不安や悩みに関しては、昨年度より増加している。また、将来的に奈良県に「住みたくない」または「わからない」と答えた人は32・5%で、理由は「買い物など日常の生活環境が整っていないから」が46・6%で最も多く、昨年から5・4ポイントも増えている。
 アンケートの結果を見ても、買い物環境の整備は、介護や医療と並ぶ重要な案件だということが分かる。県主導で早急に問題解決に取り組み、高齢者が孤立しない「ずっと住みたい奈良」を実現させるべきだ。

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