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その一言で 打ち破ろう「現代の闇」

2017年12月01日

主筆 藤山純一

 神奈川県座間市で27歳の男が若い女性8人と男性1人の計9人を殺害したとみられる事件が発覚した。数カ月の間に9人の命を無残にも奪い、遺体を切り刻んでアパートに放置していた。余りにも悲惨で信じがたい犯罪に驚愕(きょうがく)の念を覚える。
 そしてその犠牲者のほとんどが自殺志願者だったという。死にたいと思う衝動に付け込み、自らも自殺志願者のふりをして寄り添い、殺害する。逮捕されたこの容疑者は「(被害者は)話を聞いてほしいと言っていた。本当に死にたいと言う人はいなかった」と供述しており、何かのきっかけがあれば再生できる瀬戸際にいる若者を、崖っぷちから突き落とす行為は決して許されるものではない。
 人生に絶望し、誰にも相談できず彷徨(さまよ)っている15歳から26歳までの若い女性をネットで誘い出し、自宅に連れ込んで殺すという事件に、加害者にも被害者にも「現代の闇」を感じざるを得ない。
 被害者は命を絶ちたいという思いをなぜ家族や友人、学校関係者、社会に訴えられなかったのか。またなぜ家族らはこのような思いを受け止められなかったのか、残念でたまらない。
 一方、この残忍な容疑者を生んだ家族や学校、社会のあり方を厳しく問わなければならないだろう。もしこのような現状が続くならば人としてあるまじき衝撃的な事件が後を絶たないのではないか。寄って立つべき私たちの立ち位置が崩れ始めている。
 24時間365日、1日も休まず自殺予防を目的に電話相談を受け付けている「奈良いのちの電話」=0742(35)1000=。平成28年1年間の相談件数は1万8798件で、1日50件以上の電話相談に応じている。昭和54年の相談開始から38年間、昼夜を違わず相談員が毎年2万件前後の電話相談に向き合い、悩める声を受け止め続けている。
 奈良いのちの電話協会が春夏秋冬、年4回発行する広報誌には、相談員が赤裸々な思いでつづる随想「相談の現場から」のコーナーがある。そこには「何を答えている訳でもなく、ただ聞いているだけなのに多くの相談者の声の調子が少しだけ軽くなっていくのを感じる」と記されていた。
 この随想はすべて匿名で具体的な表記はないのだが、人と話すことの大切さ、人と話すことで具体的な解決策にはならないけれど、少しでも孤独を忘れることができ次の一歩を踏み出せるかもしれない。それなら私たちのできることは、このような人たちが話せるように声をかけることではないか。
 今年創設65年を迎えた学校法人道灌山学園(東京都荒川区)の創設者で、子ども、幼児教育に力を注いだ高橋系吾氏は建学の精神として次の言葉を残している。
   その一言
 その一言で 励まされ
 その一言で 夢を持ち
 その一言で 腹が立ち
 その一言で がっかりし
 その一言で 泣かされる
 ほんのわずかな一言が
    不思議に大きな力持つ
 ほんの一寸の 一言で

  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
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