論点

トップ論点一覧 > 論点

奈良市クリーンセンター ごみ発電の可能性

2018年02月09日

記者 梶田智規

 ヒーローものの漫画やアニメでよくありがちなのが、強敵と戦って勝利した後、その敵が心強い味方になるというシナリオ。まさに「ピンチの後にチャンスあり」の王道パターン。しかしこのよくあるストーリーが、読者や視聴者の心をつかむ。
 奈良市では現在、深刻な老朽化により喫緊の課題となっている「クリーンセンター建て替え」と「新斎苑整備事業」が混迷を極めている。現在の市環境清美工場は、ひび割れや鉄筋露出などの損傷箇所が多数。実際に工場内を取材させてもらうと、資料などで認識していた以上に劣悪な環境だった。
 特に1号炉は建築基準法改正前の旧耐震で建てられており、工場職員は、「震度5以上の地震が発生した場合は倒壊などの危険性が高い」と説明。しかし素人目で見ると「危険性が高い」どころか、大規模地震が発生したら「ひとたまりもないのでは」という印象。職員は安全性について「通常業務に支障はないので」と話したが、まったく不安がないはずはない。仮に本人は良くても、家族は不安を抱えているのではないだろうか。
 建て替えは速やかに進んだとしても約8〜10年かかる。現地での建て替えが決まっていれば、将来に生かす形で大規模改修にも踏み切れるのだろうが、同問題については議会でも現地、移転、広域化で賛否両論。方向性が定まらない状況で、市は来年度予算案に関連事業費を盛り込む方針だが、緊急性の高い箇所に限り改修を行う程度にとどまると見られる。
 ごみ焼却場や火葬場などは昔から「嫌悪施設」と呼ばれ、近くに住む人からは嫌われる存在。奈良市の建て替えが一向に進まないもっとも大きな要因も、現地や移転先の住民による根強い反対運動がある。ただ地元住民からすれば、実際に公害や差別の被害に遭い、つらい思いをしてきた過去があり、断固反対するのも当然だ。
 しかし今の時代、ごみ焼却場や火葬場が必ずしも「嫌悪施設」といえるかというと疑問符が付く。特に最新のごみ焼却施設は、ごみ焼却による発電設備を備え、効率良く大量に発生させた電力を売ることで、年間数億円の収益を上げている。先月開かれた市議会市民環境委員会では、昨年度から供用を開始した、神戸市の港島クリーンセンターを視察した議員が、ごみ発電が地域にもたらすメリットを解説。同施設では半年ですでに5億円以上の収益を上げた実績があり、年間で10億円の収益を見込んでいる。
 ごみ発電設備を備えれば、災害時の防災拠点として非常用電源の設置や、焼却炉本体からの発電による電力供給も可能。また電力を売って上げた収益を、地域活性化の費用として活用すれば、新たなまちづくりの可能性も広がる。
 無論、最新の施設でも公害がゼロになるわけではなく、ごみ発電も設備に費用がかかるなどメリットばかりではない。しかしかつては悪いイメージしかなかった施設が、今では形を変えているのも事実だ。ピンチをチャンスに変えることができれば、かつての敵は地域の心強い味方になるかもしれない。

  • 奈良日日新聞社は「Sport for Tomorrow コンソーシアム」の会員です。
  • LINE@で情報発信中!!
  • 奈良日日新聞はチーム準オフィシャルメディアです
  • 凛と咲く〜輝く女性たち
  • 広告のご案内
  • 購読・購入のお申込み
  • 会社情報


ホームニュース紙面内容紹介論点悠言録

購読のお申し込みバックナンバー購入のご案内広告のご案内会社情報個人情報保護

当サイトに掲載の記事・写真・図版などの無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権並びに国際条約により保護されています。

Copyright Nara Nichinichi Newspaper