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充実する医療体制 自身も病との闘いを!

2018年03月23日

主筆 藤山純一

 それは平成19年8月29日午前2時44分、妊婦の知人が橿原市内のスーパーから119番通報したことから始まった。
 買い物中の妊婦が腹痛を訴え、そばにいた知人が119番したのだ。8分後には救急車が現場到着したが、県立医大附属病院など9病院に11回受け入れを打診したが、すべて断られ、結局決まったのは1時間35分後の同4時19分。それも大阪府高槻市の病院に搬送されることになった。
 しかしさらに不幸が重なった。南阪奈道路や近畿自動車道などを走り松原インター付近で妊婦が破水。その約10分後の同5時9分に高槻市内の交差点で救急車は軽自動車と接触事故に遭い、同市消防本部の救急車で容体悪化を理由にいったん受け入れを固辞した同市内の病院に再度要請して、同46分にようやく到着したものの残念ながら妊婦は死産だった。
 妊婦に流産の可能性があるとして119番して受け入れ先の病院が決まるまで1時間35分、そして病院に着くまで1時間27分、なんと通報してから約3時間も妊婦は救急車の中で胎児を守ろうと流産と闘っていたのである。
 県内ではこの1年前にも大淀町立病院で分娩中の妊婦が重体となったが、19の病院に搬送を断られ、出産後に脳内出血で妊婦が死亡するという悲惨な事態が発生していた。
 あれから10年7カ月。これらの問題を課題として県内医療は飛躍的な発展を遂げた。特に周産期医療については県立医大附属病院を始めその充実ぶりは目を見張る思いで、荒井正吾知事が言う「断らない医療体制」が県内で着々と整備されつつあるといえよう。
 こんな折に先日、ほぼ存命は珍しいという、すい臓がん末期を見事克服した70歳代の男性の話をお聞きする機会があった。そのドラマは「余命3カ月」と医師から告げられたことから始まる。
 腰の背中のあたりの痛みが取れないので掛かりつけの町医者に診てもらったところ総合病院を紹介してもらい、検査した結果が、すい臓がんの末期だったという。「それは突然、余命3カ月と言われれば誰でも目の前が真っ暗になるのは当然だ」とその男性。しかし、持ち前の開き直りで「最後まで闘おう。治るんだという強い心があればかなえられる。生きようと自ら攻めに転じ、懸命に治療に専念した」という。
 幾度となく放射線治療をし、身体は細り髪の毛は抜け、気力はなえそうになった。そのたびに「何が起きても解決できる。きっと乗り越えられる」と踏ん張った。そして「人生はドラマだ」という。半年後、がんがなくなった。
 パソコンを見て生身の患者を診ない医師がいるなど医師不信が広がる中、この男性は「セカンドオピニオンも考えたが、担当医を信頼することができ、助けていただいた」と語る。
 「人の意見をよく聞け。人に自身の意見をよく言え」とも。医療体制の充実はぜひともお願いしたいが、病気を治すのに最後は自身の「生命力」であることを忘れてはならない。

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