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奈良市産米PR 米作りの天敵をシンボルマークに

2018年04月13日

論説委員 田村耕一

 奈良市が市内産の米の消費PRのため、シンボルマークとロゴデザインを作成した。農業振興と地産地消促進を図るとともに現在、同市の学校給食はすべて「奈良市産米」だが、このロゴマークを活用し子どもたちや家庭での認知度を高め、食育に資すためだそうだ。
 目的は結構だが、このシンボルマークを一見して、ブラックジョークかと思った。別の言い方をすれば、稲作農家へケンカを売っているのかとも言える。鹿が稲穂を食べている図柄に見えるからだ。奈良公園から春日山、芳山周辺の農家は、昔から鹿害に悩まされてきた。むしろ、鹿との戦いの歴史であったと言った方が良い。
 先年、奈良教育大において、これら周辺部に今なお残る「獣害防除の土塀」調査がなされた。奈良市川上町、雑司町、高畑町、白毫寺町、鹿野園町一帯に縦横にこの手の土塀跡があり、その延長は数10舛傍擇屬噺られる。主に江戸期の築造であるが、物資の乏しい時代、土塀で防除策を講じるなど、先人の労苦とそのエネルギーに頭の下がる思いがする。
 奈良市の農家にとって鹿が市の観光シンボルであろうことは理解はできても、天敵であることには変わりはない。米づくり農家への応援と販促活動は是としても、奈良と言えば鹿という短絡的な考えから天敵をシンボルマークに採用する「見識」を問う。
 そもそもこのシンボルマーク、市産米の販促にどのように効果があるのか。全国的にみて、米農家はJA出荷が約50%、直販が25%で全体の75%を占める。このような生産流通の図式の中で、奈良市は具体的な販売手段を示してない。これでは、販促など掛け声倒れになるだけだ。また、ロゴやシンボルマークが販促にどのように作用するのかも説明がない。
 一方、食育として地場の農産物を採用することには異論はないが、農薬や化学肥料を多投した農産物の提供が果たして食育と言えるのか疑問が残る。
 NPO法人民間稲作研究所(栃木県宇都宮市)の調査によれば、アレルギー症状の増加と輸入時に使用されるポストハーベスト農薬とに因果関係があること。2000年代になって、児童に発達障害という脳神経を犯す健康被害が激増しており、その原因としてネオニコチノイド系農薬、フィプロコル農薬、除草剤としてのグリホサート系農薬の因果関係が実証的に説明されている。
 例えば稲作においてほとんどの農家が使用しているネオニコ系農薬は残留性が強く、稲の刈り取り時までその残効がある。世界的にミツバチが減少した主要原因もこれだ。残留性が強いということは人体にも影響し続けることで、この被害を重くみたヨーロッパでは使用禁止となっている。
 給食用の食材ならば有機農産物、少なくとも特別栽培農産物を採用願いたいものだ。有機食材を使って、飛躍的に子どもの健康・教育が改善した事例は、映画にもなったフランスや千葉県など数多い。シンボルマークやロゴデザインは食育への貢献に直結しないと思うがどうか。

  • 教職40年 浅田芳正氏の教育奮闘記「教育は教えないこと!〜考える力を育てる〜」 好評のうちに連載終了 平成28年3月18日刊行
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