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企業主導型保育 保育所の「見える化」を

2018年05月25日

論説委員 黒田高弘

 2年前、匿名のブログに躍った「保育園落ちた 日本死ね」は大きな反響を生み、新語・流行語大賞にも選ばれた。政府の「1億総活躍社会」の掛け声とは裏腹に、昨年10月時点の全国の待機児童数は約5万5000人で、前年同月と比べ約8000人増加。待機児童問題は今なお都心部を中心に根強い。
 同問題の解決をはじめ、多様化する就労スタイル、労働力人口の減少による女性の労働参加拡大など総合的な課題解決として、注目を集めているのが「企業主導型保育」。いわば「会社がつくる認可外保育所」だが、運営・整備費は認可保育所並みの助成を国から受けることができる。
 他にも、延長保育や夜間保育、日曜・祝日保育、短時間・週2日のみの利用も可能など、多様で柔軟な保育サービスが提供できることや、他企業との共同利用や地域住民の子どもの受け入れができるなどのメリットがある。各企業は設置後、自分で運営してもいいし、別の法人に委託することも可能だ。
 待機児童が多い地域では、パートタイムだと子どもの預け先がなく、夜間・休日のシフトに入れられれば対応できる認可保育所は限られ、利用者にとってのメリットも多い。また、認可保育所に入るためには通常、「保育の必要性」を各自治体に認定してもらう必要があるが、「企業主導型保育所」だと就労要件などを満たせば、自治体の認定いらずで契約できる。保育料も認可保育所並みだ。
 企業にとっては、出産後も働くことができる職場環境を整備することで、人材確保や離職防止、企業のイメージアップなどにつながり、利用者にとっては、保育料が安い、送り迎えが容易など、まさに「WinWin」だが、問題がないわけではない。
 危惧されるのは、認可事業ではないため、行政の監視機能が働かないこと。今年3月には、約7割の施設で保育士不足など指導監督基準に対する抵触が明るみになった。昼寝の際、うつぶせで寝させていた▽給食のアレルギー対応のマニュアルがなかった―など10項目にわたり問題を指摘された施設もあった。
 質の担保が各企業に委ねられていることから、爛屮薀奪企業瓩砲茲覘爛屮薀奪保育園瓩砲覆覯椎柔も十分にはらんでいる。
 一方で、待機児童問題の原因の1つとして、「保育士不足」もある。企業主導型保育所が増え続ければ、パイの奪い合いになりかねない。実際に県内の保育園長も「多様で柔軟な保育サービスで、例えば0〜2歳児までの保育や給与など待遇面改善をうたえば、潜在保育士や新人保育士はそちらの方がいいと選んでしまう可能性もある」と指摘する。
 注目を集める「企業主導型保育所」。待機児童問題の解決など、設置に向けた政府の思いは理解できる。だが、企業内ということもあり、利用者や保育士にとって不透明感が否めないのも事実。保育士不足が叫ばれる中、これ以上、保育士のイメージを悪くさせ、保育離れを加速させないためにも、同保育所の「見える化」が求められる。

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