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聖徳太子御遠忌1400年 奈良から平和の風を

2018年06月29日

主筆 藤山純一

 戦後73年間、わが国は他国と1度も戦争することなく、もちろん戦場に出向き1人の国民も命を落とすことがなかった。それは「あの悲惨な戦争はもうごめんだ」という強い思いが私たち国民の一人一人にあったからではないだろうか。
 今から約1400年前、607年に法隆寺を創建した聖徳太子は十七条憲法を制定したとされ、創建1400年を迎えた2007(平成19)年、同寺の大野玄妙管長は「改めて法隆寺創建の原点、太子の思想である『和の精神』の普及に努めたい」と強調。
 2年半後に迫る2010年の平城遷都1300年祭事業について「飛鳥、藤原京や平城京など古代都市は平和社会を求めて建設された。仏教の慈悲の世界、平和を希求し発信する事業であってほしい」と熱く語っておられたのを思い出す。
 ご存じのように十七条憲法の第一条冒頭には、「和をもって貴し」とある。和の精神を持って貴しとし、むやみに反抗することがないようにせよ。ところが人は皆、党派心があり悟る者は少ない。君主や父に従わず近隣の人々と争いを起こす。しかし、上下の隔てなく和らぎ仲睦まじく話し合いができるなら、事柄は道理にかない何ごとも成し遂げられないことはない、と記す。
 また、第九条には「信は是れ義の本(もと)なり」と説く。「信」は人の道である「義」の根本。何ごとを成すにあたってもまごころをもってすべきである。「善悪成敗」は必ずこのまごころがあるかどうかにかかっている。人々が互いにまごころをもってことにあたったならば、どんなことでも成し遂げられる。これに反してまごころがなければ「万事にことごとく敗れん」と説いている。
 時代背景や社会構造はもちろん違う中で、また、聖徳太子に関わるいろんな論議があるにせよ、1400前に説かれた「和の精神」はまさに現代にも通じる大哲理と言っても過言ではない。大野管長は語る。「太子の理念である『和の精神』は今も続いている。平和を希求するDNAが県民や日本人にはある。奈良は平和発信の拠点になるべきだ」と。
 昨年、数々の国際紛争を調停してきた平和学の権威、ヨハン・ガルトゥング氏の著書「日本人のための平和論」(ダイヤモンド社刊)に出合った。ガルトゥング氏はオスロ生まれで今年、米寿を迎える。中央大学や同志社大学など日本の大学で教鞭(きょうべん)を執り、名誉博士や名誉教授の称号数多。「もう一つのノーベル賞」といわれるライト・ライブリフッド賞などを受賞している。
 国家や民族が信頼と協調の関係にある「積極的平和」を提唱、日本が2つの中国、2つの朝鮮、ロシアを含めた東北アジア共同体の構築を求め、共同管理で領土問題の解決策を見出す。そして「和解の教育」で恒久平和への道を探る。
 3年後の2021年は聖徳太子御遠忌1400年に当たる。不穏な雰囲気が取り巻くわが国に、古都・奈良から聖徳太子から受け継いだ平和の風を起こそうではないか。

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