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インバウンド おもてなしの精神を

2018年07月06日

記者 梶田智規

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが決定した平成25年のIOC総会。その最終投票直前に行われた東京のプレゼンテーションで、アナウンサーの滝川クリステルさんが日本の「もてなし」の精神などを流ちょうなフランス語で説明。言葉を一語一語なぞるようにジェスチャーを加えながら「お・も・て・な・し」と言って合掌した姿は印象的で、その年の流行語大賞にも選ばれた。
 チップの習慣がない日本で、見返りを求めず客人を心から慈しみ、気遣い、迎え入れる心。世界に誇る日本の文化だが、果たしてその「もてなし」の精神は細部まで浸透しているのだろうか。高級旅館やホテル、レストランの従業員はもちろん徹底した教育を受け、八方に気の配ったサービスを提供する。しかしそれとは異なる宿泊・観光施設の従業員、観光客の移動手段であるタクシーやバスの運転手にまで浸透しているかといえば疑問が残る。言葉が通じない外国人観光客を冷たくあしらう姿を目撃したこともあるし、そういった話をよく耳にもする。
 全国的に急増しているインバウンド。県も年々増加しており、28年度には年間165万人を記録。ただ宿泊客数は伸び悩んでおり、平均泊数は0・8泊で最下位。いまだに日帰り・通過型観光から抜け出せない状況で、もちろん観光消費額もそれに比例して伸び悩んでいる。
 一方で伸びているのが、手ぶら観光の促進による奈良市総合観光案内所での手荷物一時預かり事業。観光客にとってはありがたいサービスだが、旅館やホテルを予約していないという裏返しであり、手放しでは喜べない。ちなみに、毎年本紙の元旦号で実施している「県内ゆるきゃら大投票」で上位常連の奈良市観光協会マスコットキャラクター「しかまろくん」のグッズの売り上げは大幅に上昇。これは同協会の努力のたまものであり、本紙も一役買っていると信じて喜びたい。
 宿泊客増加を目指すには、まずは観光客の滞在時間を延ばすことが必要で、県や各自治体の観光協会などが連携し、観光地のPRに加え、飲食、土産物、自然、体験などの情報発信に力を入れ始めている。観光客には東大寺や奈良公園などを堪能してもらい、中南和に移動してトレッキングやケイビング、農業などを体験してもらえれば理想。1泊といわず2泊、3泊してもらう価値が奈良にはある。
 インバウンドの増加に伴い、市内を中心にホテルの建設ラッシュが相次ぎ、スタッフの取り合いが発生。また訪日外国人旅行客の「施設スタッフとのコミュニケーションが取れない」との声も多く、日本語を話せる外国人スタッフの採用を積極的に行っているという。一方、バス業界も人手不足が慢性化しており、ドライバーをはじめとした人材確保に力を入れるとともに、サービス向上に向け環境整備に尽力している。
 これらの対応はもちろん重要だが、観光における日本の売りは「おもてなし」の文化。国の始まりの地である奈良は、あらためてこれに重点を置き、人の心で大幅な宿泊客増加を達成してもらいたい。

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