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県立高校再編 「郷土の誇り醸成」と矛盾

2018年07月13日

論説委員 黒田高弘

 「歴史と芸術が息づく心豊かな文化の都・奈良県」を目指し、県が天理市杣之内町に建設する「(仮称)県国際芸術村」の起工式が11日、同所で営まれた。日本や地域の文化を新たに創造していく力、郷土の誇りを基礎にして、文化の力を地域や産業の発展に生かす奈良となることを目指すという。
 1300年の歴史に彩られた奈良。奈良時代の日本の首都「平城京」に代表される「平城」、『万葉集』にも歌われた「高円」、『古事記』の神武東征にもその名が残り、狩りに適した野という意味を持つ「吉野」など、いにしえの時代から連綿と伝え継がれてきた地名が今なお多く残るが、これら美しい地名が校名から失われようとしている。
 県立高校再編の話である。今号で報じた通り、西の京、平城、登美ケ丘の3校を「国際高校(仮称)」と「県立大学付属高校(同)」の2校に再編。大淀と吉野は統合して「奈良南高校(同)」、高円は「芸術高校(同)」に名称変更される。なんと無機質な響きだろうか。
 平城高校の校章は、奈良時代に平城京で使用された瓦の文様である「複弁八葉蓮花文(ふくべんはちようれんげもん)」を図案化、高円高校のそれは、高円、春日、生駒の3つの山と古来から萩の名所とされてきたことから萩を図案化したもので、どちらも奈良の歴史を踏まえた校章となっている。
 吉野高校は、桜の名所と知られる吉野山のふもと、吉野川のほとりに位置。吉野木材資源の研究・開発に貢献する人材の育成を目指して、明治35(1902)年に開校した県立農林学校を前身とする吉野林業高校と、豊富な吉野材の開発と有効利用のための技術者の養成を目指して同37(1904)年に開校した吉野実業高校を前身とする吉野工業高校という歴史と伝統を受け継ぎ、昭和52(1978)年に統合し、誕生した歴史と伝統を持つ高校であるにもかかわらず「吉野」の名が消える。
 県は昨年3月、「県文化振興大綱」を策定。歴史を通して日本および地域の文化への理解を進めるとともに、奈良に住むことへの誇りと文化継承の機運の醸成を図っていくとしているが、今回の高校再編劇は文化振興と矛盾してはいないか。奈良らしさが感じられる校名がなくなることで、次世代を担う子どもたちの愛郷心がさらにそがれていくような気がしてならない。
 将来的な人口減少を見据えた高校再編は時代の流れであり、仕方ない部分はある。だからといって、説明責任を果たさなくてもいいという理由にはならない。再編対象校の公表からわずか20日間での結論、県議会の強行採決などはあまりにも県民を無視している。吉田育弘教育長は、「県立高校適正化実施計画案」の県議会での賛成多数による可決を受け、「関係者に丁寧に説明し、確実に計画を進めていきたい」などとコメントしているが、順序が逆であることは多くの県民が感じるところだ。
 県民をないがしろにするような施策を遂行しているようでは、奈良に誇りを持つ県民が増えるはずもなく、「心豊かな文化の都・奈良県」になどなるはずもない。

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