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自殺対策 人の尊厳守る社会に

2018年08月10日

論説委員 黒田高弘

 広島は6日、被爆73年となる「原爆の日」を迎えた。同日開かれた平和記念式典では、小学6年生2人が「平和への誓い」を読み上げた。以下、一部を紹介する。
 「人間は美しいものを作ることができます。人々を助け、笑顔にすることができます。しかし、恐ろしいものを作ってしまうのも、人間です。
 昭和20年、1945年8月6日午前8時15分。原子爆弾の投下によって街は焼け、たくさんの命が奪われました。『助けて』と泣き叫びながら倒れている子供。『うちの息子はどこ?』と探し続けるお父さんやお母さん。骨をもいでくださいと頼む人は、皮膚が垂れ下がり、腕の肉がない姿でした。広島は赤と黒だけの世界になったのです。
 73年が経つ。
 私たちに残されたのは、血がべっとりついた少女のワンピース。焼けた壁に記された伝言。そして、今もなお遺骨のないお墓の前で、静かに手を合わせる人。
 広島に残る遺品に思いを寄せ、今でも苦しみ続ける人々の話に耳を傾け、今私たちは強く平和を願います。(後略)」
 長崎ではきのう9日、「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が開かれ、田上富久市長は「核廃絶を目標とした決意を忘れないで、人類がもう一度被爆者を生む過ちを犯す前に、核兵器に頼らない安全保障政策に転換することを強く求める」と力強く訴えた。
 子どもたちが声高らかに言う、恐ろしいものとは何も核兵器という凶器だけではない。人間の尊厳そのものを大切にしない社会のほうが、核兵器などよりもはるかに恐ろしい。兵器などによる猖召泙覆せ爿瓩任呂覆、犲ら望む死瓩鮴犬濬个垢らだ。
 警察庁の集計によると、昨年1年間の全国の自殺者数は2万1321人。前年と比べ576人減となり8年連続の減少。県も187人で同比12人減。自殺者は年々減少傾向にあるものの、全国で1日約60人が自ら命を絶つ道を選んでいる。
 失業やリストラ、生活苦といった職業や生活問題、いじめなどの苦痛な体験に伴う精神疾患など自殺の危険因子が挙げられ、「個人的資質」を指摘する声もあるが、そういう問題を生み出す社会にこそ問題がありはしないか。
 平成10年以降、全国で自殺者が激増し、年間3万人を超えた。特に中高年の自殺が急増した。その理由として、景気の悪化を指摘する声も多い。これを「個人的資質」とするのは、国の責任逃れと言わざるを得ない。
 広島・長崎への原爆投下により亡くなったとされる人は約60万人と言われている。一方、平成10年からこの20年間での自殺者も約60万人。原爆投下により亡くなられた方々は避けることのできない死だったが、自ら生きることを絶とうとする人の死は止めることができる。
 子どもたちは「平和の誓い」で、「今でも苦しみ続ける人々の話に耳を傾け、今私たちは強く平和を願う」と訴えたが、何も戦争をしないことだけが平和ではない。人が人らしくいられることが平和なのだ。

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