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目指せ「宿泊観光地」 「観光重心」南下が鍵

2018年08月17日

主筆 藤山純一

 35度を超える真夏日が続いているが、東大寺・奈良公園周辺は連日、インバウンドの客であふれている。特にJR奈良駅では午前中にどっと押し寄せ、夕方になると大阪や京都方面にどっと帰っていく。
 近鉄奈良駅でも大きなスーツケースを持った外国人観光客がコインロッカーを探してうろうろしているのをよく見かける。寂しい話だが、古都・奈良は今、「日帰り観光客」であふれているのだ。
 奈良市がこのほど発表した平成29年に同市を訪れた観光客数は、前年を約77万人上回る約1631万人(5%増)となった。注目の宿泊客数は約180万人となり、前年を約22万人上回り14・2%増。外国人観光客の伸びも好調で前年の26・3%増の約199万人となり、19年からの10年間で約4倍増えたという。
 22年に開催された平城遷都1300年祭の観光客数約1841万人には及ばないものの、宿泊者数は、この年(195万人)に近づく勢いである。同市では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、ホテルなどの宿泊施設の建設が相次いでいることが大きな要因と見ているが、国際文化観光都市を目指す奈良市にとって、宿泊者が観光客全体の1割に過ぎないのはいかがなものか。
 規模は違うものの隣県のライバル、京都市と比べてみると、昨年の観光客数は5362万人で、うち宿泊者数はなんと3割の1557万人に及ぶ。さらにそのうちの353万人が外国人だ。奈良市を訪れる観光客数がほぼそのまま京都市に宿泊している計算になる。
 今後も奈良市内でホテルなどの宿泊施設がぞくぞくと誕生することを強く期待しているが、果たしてそれだけで「宿泊観光地」としての飛躍が果たされるかどうか疑問でならない。そして何より大事なのは古都・奈良の観光は決して奈良市内だけで完結しないということである。むしろ奈良がわが国の発祥の地であることを裏付ける文化遺産は中南和地域に多くみられる。
 そこで提案したいのが奈良市が県の北端にあることから、奈良県の「人口重心」ならぬ「観光重心」を南下させるための積極的で多様な取り組みをお願いしたい。
 観光商品を奈良市と中南和地域とのセットにするほか、京奈和自動車道の整備で関西国際空港から五條市内まで約1時間で来られることから、観光客をまず中南和地域に呼び込み北和地域に向かうルートの開発を求めたい。自然と文化遺産に恵まれた五條・吉野地方、飛鳥・藤原京や桜井・纏向遺跡など。
 もちろん斑鳩・法隆寺、信貴山・朝護孫子寺、王寺・達磨寺など聖徳太子ゆかりの地も見逃せない。そして今春オープンした、壮大な弥生時代の遺構、唐古・鍵遺跡史跡公園、さらには郡山城の天守台にもぜひ登っていただきたい。こう思いをはせると奈良は十二分に「宿泊観光地」だ。
 宿泊施設なくして観光振興はない。奈良こそ泊まり込んで奥深さを味わってほしい。そのためには民泊も大きな受け皿になるに違いない。

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