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起業支援 夢なき奈良に発展なし

2018年08月31日

論説委員 黒田高弘

 今年は、明治元(1868)年から起算して満150年に当たることから、政府は、明治以降の歩みを次世代に遺す施策▽明治の精神に学び、さらに飛躍する国へ向けた施策―など「明治150年」関連施策を推進している。
 同年1月、新政府は添上郡奈良に大和鎮台を設置し、5月に奈良県(第1次)となり、堺県への編入などを経て20年4月、再設置された(第2次)。その後、大阪や京都との鉄道開業により、観光地として栄え、昭和25年には大阪のベッドタウンとしての発展の礎が築かれるなど、幾多の困難を乗り越え、今日の奈良があり、それを支えた多くの企業があるのも確かだ。創業100年以上の企業は、400件を超える。
 ある県外から移住し、起業した若手経営者がこんなことを言っていた。「奈良はポテンシャルが高いにもかかわらず、あぐらをかいている企業が多い。そしてそれら企業のトップらが各種協会長などを務めているから発展しようがない」、さらに「奈良を盛り上げてきた人たちだから敬意を払うが、時代は変わっている。古い考えの人たちには隠居してもらって、新たな風を吹かせないと、奈良は全国にどんどん遅れをとる」とも。
 厚生労働省「雇用保険事業年報(2016)」によると、日本の開業率は5・6%で、米国の9・3%、英国の14・3%の半分程度にとどまっている。日本の経済を再興し、産業を中長期にわたる低迷の状況から脱却させるべく「産業競争力強化法」が平成25年に成立したものの、わが国の開業率は緩やかな上昇でしかない。
 そんな中、今年7月には「改正産業競争力強化法」が施行。開業率のさらなる向上を目指し、地域における創業支援体制の整備強化を進める方針で、開業の機運が高まることを期待したい。
 ちなみに、県の開業率は5・5%で全国平均並の16位。一方、廃業率は3・8%で全国平均の3・5%を上回り全国5位にランクインする。
 残念ながら廃業に至った若手経営者にも話を聞いたこともある。彼が言うには、「奈良は、思っていたほど観光客がお金を落とす場所ではなかった。飲食店などは観光客というよりも、地元住民に親しまれる店のほうが生き残りやすい」。また、「自分のつきあい方次第という部分もあると思うが、県外からの起業者をあまり受け入れてくれる環境にない」と、奈良独特の県民性が合わなかったと話す。
 ただ、奈良を愛する若者が多いのも事実。今号で紹介したように奈良の活性化のために、さまざまな事業に取り組む若手経営者も増えつつある。そこには県や金融機関の後押しも大きな力となっていることは言うまでもない。
 明治維新の礎を築いた吉田松陰は不世出の教育者とも言われ、後の明治政府の傑物を数多く輩出した。彼の言葉に「夢なき者に計画なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」がある。彼らの夢の実現が、奈良のさらなる発展につながる。

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