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新潮45寄稿問題 誰も置き去りにしない

2018年09月28日

主筆 藤山純一

 「子どもをつくらなかったら生産性がないのか」、「子どもができない夫婦は生産性がないのか」、「一生独身の人生を選んだ人は生産性がないのか」。
 昔と違ってわが国でも多種多様な人生観が尊重されるようになってきており、それはわが国だけでなく世界の潮流となってきているが、そのような生き方と逆行するような論文が話題沸騰している。
 注目されているのは、新潮45(新潮社)の8月号で自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国)が書いた「『LGBT』支援の度が過ぎる」という寄稿だ。「彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がないのです」、そして「そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と疑問を投げかけているという。
 この寄稿を巡って批判が噴出すると今度は同誌10月号で特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を掲載、これに対して同社での執筆や取引を止めようとする動きも出て、ついに25日、同社は謝罪するとともに新潮45の休刊を決断した。月刊誌として社会の事象に一石を投じるのは大賛成だが、人の生き方を踏みにじるような寄稿を載せるのは同じメディアとして許せない。
 そもそも人の人生を「生産性」の尺度だけで図れるものではない。性的少数者のLGBTだけでなく社会的弱者も含めて、すべての人々が幸せに平和に過ごせる社会こそ人間社会と言えるのではないか。
 国連は3年前の2015年、設立70年を迎え、「誰も置き去りにしない」を基本理念に2030年の世界を見据えた指針「SDGs(持続可能な開発目標)」を策定。格差や貧困、気候変動、そして日常の生産や消費の在り方まで、17分野169項目にわたる目標を掲げた。
 しかし世界の現実は厳しい。世界各地で宗教、民族上の対立で内戦が続き、社会への不満から若者たちが引き起こす犯罪やテロも絶えない。その上、人々の生活を一変させる気候変動や災害、予測不能な危機が今、世界を震撼(しんかん)させている。
 一方、わが国の政界では安倍晋三首相が自民党総裁に3選された。近く内閣改造が行われるが、果たしてどんな政権ができるのか、これまでの経緯を考えるとあまり期待できないのが現状ではないか。
 もうすっかり有名になった森友・加計学園問題では、この問題に絡み1人が自殺したほか、公文書まで改ざんされ、「忖度(そんたく)政治」が浮き彫りになったにもかかわらず、うやむやのうちに終結。政治家として許されない発言が相次いでも誰も責任を取らない。
 今回の「杉田寄稿」問題でも自民党内から批判の声はあまり聞こえない。当事者としての杉田氏はもちろん、その杉田氏を公認し、杉田氏自身が所属する、政権政党、自民党としてこの問題を重視し、しっかりと説明責任を果たし、対応すべきである。
 その上で、長期政権となった安倍首相には「誰も置き去りにしない」政治を目指してほしい。命の重さが感じられる社会実現にまい進していただきたい。

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