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住んで良しの奈良へ 故郷の空を見上げて

2018年10月05日

論説委員 黒田高弘

 「もし自分が天に昇るときは、やっぱり奈良がいいな―」。東大寺でのライブ後、会場がまだ熱気に包まれるなか、堂本剛さんは観客やスタッフ、そして同郷の奈良県民に対し、奈良愛に満ちた熱いトークを約30分間にわたり繰り広げた。
 昨年6月に突発性難聴を発症。奈良で生まれ育ち、「心眼が育ってしまった」という堂本さんは、東京に出ても狄喚瓩蚤佻辰垢襪茲ε悗瓩拭しかし時間の流れが早く、頭で対話する人が多い環境のなか、必死で踏ん張り、あらがったが、「心の目でいろんな人たちを見て、その人が持っているエネルギーを感じながら仕事をすると、とても苦しくなることが多い―」。心は次第に傷つき、体がSOSのサインを出した。
 堂本さんはこの頃、東大寺や平城宮跡などを度々訪れ、心の傷を癒やしたという。「今の自分では消化しきれない思いを、故郷の大きな空へと預け、自分が成長したらその思いをもう一度体内へ戻す―」。堂本さんらしい独特の表現だが、同じ奈良県民として共感せずにはいられなかった。奈良の神社仏閣、空、山、景色、空気には、そういった広さ、大きさ、美しさがある。住み続けているとその感覚は薄れていくが、県外に出ていて奈良に帰ると、あらためて実感する。堂本さんの言葉の端々からは、奈良県民としての犖悗雖瓩感じられた。
 県が今年8月にまとめた「平成30年度県民アンケート調査結果」によると、奈良を「とても住みやすい」とした県民はわずか1割。「どちらかといえば住みやすい」と合わせても7割を切った。県が「住んで良し」「働いて良し」「訪れて良し」の奈良の実現を目指しているなかで、なんとも寂しい数字だ。
 さらに将来的に「住みたくない」または「わからない」と答えた人は31・3%で昨年よりも増加した。「買い物など日常の生活環境が整っていないから」などが理由。前述した「感覚の薄れ」があるのか、人間はやはり無いものねだりだなと感じさせられる。
 一方で民間調査会社が、魅力度、認知度、情報接触度、各地域のイメージ、地域資源の評価などを基に多角的に評価する「地域ブランド調査」では、奈良県は全国6位の上位に。多くの優れた資源を持つ奈良の魅力を、実際に住んでいる奈良県民が理解していないというのが現状だ。
 今年9月4日に実施した奈良日日新聞社創刊120周年記念シンポジウムで、荒井正吾知事は奈良のあるべき姿、将来像について、「形ではなく、精神性が奈良の値打ち。日本を生んだ精神の強さを県民一人一人が自覚することが必要」と訴えた。堂本さんが語る奈良の魅力と重なる。
 「奈良というふるさとに対して直接的な何かはできなくても、奈良をただ心の中で思い、愛するというそれだけで、奈良には伝わっているんだろうなと感じています」と堂本さん。われわれ県民は一度立ち止まり、故郷の大きな空を見上げ、もう一度奈良の良さ、魅力について考え、見つめ直す必要があるのではないだろうか。

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