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空き家の利活用 地域一体の呼び水に

2018年11月23日

記者 梶田智規

 「晩ご飯食べていき。お母さんに連絡しといたるわ」小学生の頃、近所の友達と遊んでいると、その母親から当然のようにご飯に誘われる。ごくごく当たり前の日常だった。ご近所さんの家が遊具など何かを設置するとなれば、大人も子どもも集まって手伝う。これも昔はよく見る光景。しかし最近では、母親たちの井戸端会議すら少なくなったように感じる。
 今年2月の内閣府の世論調査を見てみると、「地域での付き合いをどの程度しているか」との問いに「付き合っている」と答えた人が67・7%。ただ「よく付き合っている」と答えた人は18・3%にとどまり、「ある程度付き合っている」が49・4%だった。14年12月の調査では「付き合っている」が69・5%で、「よく付き合っている」が21・1%。少し数字は下がっているものの、個人的にはもっと差があると思っていただけにこの結果には驚いた。
 これは「付き合っている」の境界線が以前よりも低くなっているとも考えられる。しかし「地域での付き合いは、どの程度が望ましい」との問いに41・5%が「住民全ての間で困ったときに互いに助け合う」と回答。14年の調査と比較すると7・3ポイントも上昇している。この結果と近年問題視されている人間関係の希薄さとのギャップは、気持ちと行動が比例していないからではないだろうか。
 人口減少などを理由に年々増加している空き家。国は27年に空き家対策特別措置法を施行し、対策に本腰を入れ始めた。県内でも各地域で空き家を管理する団体が設立され、利活用して移住・定住を促進し、地域の活性化につながるよう取り組んでいる。今号の1、2面で紹介した団体のメンバーは皆、それぞれ別の仕事があるなかで、まちを活性化させるためにプライベートの時間を割いて取り組みを進めている。
 しかし共通して感じたのは、楽しみながら活動しているという点。紙面では表現しきれない「自分たちが住むまちへの愛」に溢れていた。さらにはそれらの取り組みを通じてその思いがほかの住民にも波及し、縁もゆかりもない土地から移住してきた人たちにも伝染していた。
 上市まちづくりリターンズが運営するゲストハウス・移住体験スペース「三奇楼」。夜に展望デッキに出ると、川や山などの自然と吉野のまちの明かりが重なり、何時間でもボーっと見ていられそうな雰囲気。取材日にはあまり星は出ていなかったが、地域おこし協力隊OGの管理人によると、天気のいい日は満天の星が楽しめるという。このデッキは近畿大学建築学科の学生や、国立奈良工業高等専門学校の生徒たちも携わり、地元住民らと一緒に作り上げた。この場所に愛着を持った彼らが近い将来、上市に移住し、中心となってまちを盛り上げてくれるかもしれない。
 世論調査の結果を見ても、多くの人が住民間で助け合うことは重要だと考えており、何か行動を起こすきっかけさえあれば地域が一つになる可能性を感じた。負の遺産である「空き家」は、考え方によってはその呼び水と成り得る。

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