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宇陀市住民投票 結果には真摯に従うべき

2018年12月07日

論説委員 黒田高弘

 県東部地域の将来を創るという大きな志の下、榛原町、大宇陀町、菟田野町、室生村の3町1村が合併し12年が経過した宇陀市が揺れに揺れている。
 宇陀市誕生当初から市政のかじ取りを担ってきた竹内幹郎氏が昨年5月、老朽化に伴う保養センター「美榛苑」の代替施設を作るべく、「宿泊事業者誘致・公園整備事業」として、休暇村協会と協定を締結。だが、勇退した竹内前市長に変わり新市長に当選した盡省次氏が事業中止を表明したのだ。
 竹内前市長は「雇用の創出、自主財源の確保につながるものと総合的に判断し、さらに飛躍するために、将来のあるべき姿をしっかり見据えた上で、宿泊事業者誘致事業と公園整備事業を一体的に捉まえ事業を展開する必要があると考えている。そうすることで、遊休地の活用による住環境の改善、道路建設による利便性の向上、就業の場、日帰り温泉など福祉の向上に必ず寄与するものと考えている」と昨年の3月定例会で意気込み、市議会も竹内前市長の思いを受け止め、事業を認めていた。
 しかし、同年12月、竹内前市長の今期限りでの退任表明で、風向きが変わる。元市議の盡氏と前市議2氏による新人同士の三つどもえ戦を、盡氏が制した。4月22日、同市天満台西にある高見氏の選挙事務所で盡氏は「宇陀市に新しい政治文化をつくるきっかけにしたい」と喜びを爆発させ、「行政の情報を積極的に公開し、市民とともにまちを大きく変えていきたい」と意気込みを語った。
 ここでふと疑問が生じる。盡氏は、出馬表明時も初当選を決めた時も、現在の宇陀市公式ホームページのあいさつでも、宿泊事業者誘致事業・公園整備事業についての考えをいっさい語っていない。にもかかわらず、初当選から2カ月足らずで同事業の中止を高らかに宣言した。疑義を感じていたのであれば、市長選の争点にすべきだったのではないか。そうすれば、市民にもこういう問題が起きているということを提起できたはずだ。盡市長の今般の動きは腑(ふ)に落ちない部分がある。
 市の最大の課題を「若い世代がまちを離れ、社会の現場を支える担い手が不足していること」とする盡市長。今回の事業中止の理由を、総事業費が予想をはるかに超えることや、市税収入を上回る費用をかける余裕がないためとする。至極もっともな理由である。
 だが、合併当初約3万9000人だった人口は今年3月1日現在で約3万1000人。高齢化率も27%から38%まで急上昇。現状のまま減少が続けば2040年には1万9000人まで減ると言われ、高齢化率も43%にまで及ぶと予測され、若者の就業の場や雇用の創出は喫緊のテーマである。「金がない、金がない」では魅力ある宇陀市になるはずもなく、金がないなら知恵を出すのが市長の職務ではないのか。
 とにかく、宿泊事業者誘致・公園整備事業の是非は、市民の判断に委ねられた。どのような結果になろうとも、市長も市議会も市民に託した以上は、その決定に真摯(しんし)に従うべきだ。

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