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障がい者スポーツ指導員 夢諦めさせないためにも

2018年12月14日

記者 山脇佑介

 「養護学校を卒業後、スポーツをする機会はほとんどなく、大会に出れるのは学生の間のみ。一生に一度と言われていたほどだ―」。3年前に知的障がい者のソフトボールチーム「ぐれいとぶっだ」の濱田眞人代表・監督に取材した際に聞いた、印象的な言葉。
 学生の時は、体育の授業や部活動などでスポーツをする機会があるものの、卒業し一歩社会へ踏み出すと、自分自身でスポーツをするか否かを選ぶ以前に、そもそも「スポーツをする」という選択肢がないというのは、実に寂しい。
 濱田監督が同チームを作った当時と今では、障がい者スポーツを取り巻く環境も変わってきてはいるが、それでもまだ、障がいがある人が気軽にスポーツを楽しめる環境が県内で整っているかというと、道半ばのはず。
 その上で欠かせない存在が、「障がい者スポーツ指導員」。スポーツの喜びや楽しさを伝えるだけでなく、地域の障がい者スポーツ振興のリーダーとして、普及・振興を進めるなど、果たす役割は非常に大きい。
 ただ、今号で取り上げたように、県内の指導員の数が計216人と近畿ブロックで最少となっている現状や、その中で実動しているのがわずか2割にすぎないという現状は、方策を真剣に考えていかなければならない。
 しかし、決して悲観すべき状況ばかりではないと感じる。特に、中級以上の指導員数の割合を見ると、県は中級以上の登録者数が54人で、全体の25%、つまり4人に1人が中級以上の指導員となる。この割合は近畿ブロックで見ると、大阪の29・7%に次いで2番目となる。
 地域の障がい者スポーツ振興のリーダーとなりうる中級以上の割合が多いと言う利点を生かし、障がい者スポーツ指導員同士でつながりを作り、一緒になりスポーツイベントなどを企画するのも一つ。
 また、2019年のラグビーワールドカップ、20年の東京オリンピック・パラリンピック、そして21年の関西ワールドマスターズゲームズと、3年連続で世界規模のスポーツイベントを控えており、試合などをテレビで見たり、実際に会場へ足を運ぶ人も多いはず。
 その中で、「実際にしてみたい」や「このスポーツで大きな大会に出場してみたい」という気持ちが生まれたとしても、身近でできる環境や教えてくれる指導者がいなければ、かなうことのない遠い夢に終わってしまう。そうした夢や思いを諦めざるを得ない人を一人でも減らしていけるように、障がい者スポーツ指導員が一人でも多く増えてくれることを、資格取得だけで終わらず、スポーツを始めるきっかけになってもらえることを切に願う。
 そして何より、障がい者スポーツ指導員の増加が、県内の障がい者スポーツの裾野を広げる足がかりにもなり、今よりもさらに盛り上がりを見せれば、障がいのあるなしに関わらず、県内のスポーツ全体の活性化にもつながる。そうしたスポーツが生み出すつながりや可能性を信じたい。

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